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64話 Tears of Victors 04



 先生と共に、バリケード内に戻ったが。


 お世辞にも『戦略』や『戦術』寄りではない俺ですら。

 どうしても(ぬぐ)えない、違和感。


 疑問点があった。



「───先生。ここ、『最前線』だよな?」


「うん」


「『ミニ校長』の数、少なすぎないか?

 来た時に見たが、1階は溢れ返ってたぞ?」



 ・・・そう。

 この階の雑魚が、あまりにも少ない。


 そもそも先生が単独(ソロ)でバリケードから出られたのが、おかしい。

 あれから多少の戦闘はあれど、リタイアせずに俺達が戻ることが出来た事もだ。



「言いたい事は分かるよ、アルヴァレスト君」


「今は、ただのヴァレストだ」


「気にしないでいいじゃん。アル君」


「・・・おう・・・」



 先生の笑顔に、少し照れる。


 ぺしぺし、と膝を叩く、ぬいぐるみの手。

 痛くは無いが、どうにも───なぁ。



「あのね。多分、次は大群で一気に侵攻してくると思うんだ」


「ああ、そうだろうな」


「まともに交戦したら、全滅確定だよ、これ。

 『絶対攻防壁(バキュラー)』を発動しても、相当こっちの戦力は削られる。

 それじゃあ、『校長』が倒せなくなっちゃう」



 『絶対攻防壁(バキュラー)』というのは。

 各階で1度のみ発動可能な、時間制限付きの固定壁だ。


 20分以内なら敵味方、何者も通れず。

 それどころか、敵は引き寄せられるように突っ込んできて、自滅する。


 本来なら、使っておくべき手段なのだが・・・。



「1階では、使う暇もなかったよ。撤退で精一杯」



 在校生に『魔力補給(リチャージ)』してもらいながら話す、俺と先生。



「・・・てことは、アレか。『ミニ校長』の数が残りすぎてる、と」


「そうだね。『絶対攻防壁』は、必ず“各階で”使っておかないと駄目なんだ。

 途中の階からじゃ、使った直後、こちら側が危険にさらされるよ。

 指導要綱(マニュアル)には単に、《時間制限》って書かれてるけど。

 実際は、『絶対攻防壁』自体に耐久値が設定されてるんだよね」


「つまり、時間あたりの敵戦力が大きければ、あっという間に『壁』は消滅、か」


「そそ。ボクも焦ってて、ミスしてるんだ。

 この2階バリケード、どうせなら一番端の、3階階段直前に作れば良かったんだよ。

 そうすれば、『絶対攻防壁』使って即、3階へ避難。

 少しでも向こうの戦力を削れたんだけどね」


「教員ほぼ全滅の状況で、先生は良くやったさ。

 後は、俺も協力する。

 こうなったら、意地でもな」


「アル君っ!」


「出来れば、マッチャム先生じゃなく、保健のウィシュリー先生が良かったが」


「ちょっ・・・!!ひどっ!!ひどすぎるっ!!」


「オレも、ウィシュリー先生が良かったッス!」



 ん??

 誰だ、こいつは?



「ウィシュリー先生は、産休だよっ!というか、既婚者だからねっ!?」


「そういうのは、気にしないッス!」



 ・・・ああ、こいつは。


 竜だな。

 俺と同類の気配がする。



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