657話 Nothing worth living for or dying for. 07
「さあ、それで───次は何を話してくれるのかな」
「もうこれ以上、僕が持っている情報なんて無い。
どうせ、《管理官》の事だって知ってるんだろ?」
「まあ、そうだが。
ようやく近いところまで来たじゃないか」
「だから。
近いも何もないって。
あんなデタラメな・・・異世界の存在と対話なんて、成り立たない。
さてはあんたも接触を試みて、失敗したクチだろ?
僕だって同じだよ。
まったく相手にされなかった。
アレと仲良く出来てりゃ、『天使に捕まらないような能力』でも頂いてるさ」
「───よし。
やっと、嘘をついたな」
「・・・!!」
「ようやく君は、嘘をついてくれた。
つまり。
ここから先こそ、私が知りたい部分だということだ」
「・・・嘘じゃない、本当だって。僕は、」
「また嘘をついた。嘘を重ねた」
「・・・・・・」
「天界へ招かれた《規格外品》はね。
君が初めて、という訳でもないのだよ」
「・・・・・・」
「すでに私は、知っているのさ。
君が。
現地採用の《補佐官》として、『採用されなかった』事を」
「・・・・・・誰の脳から、それを引きずり出した?」
「古い世代の《規格外品》だよ。
たまたま私と《船》で乗り合わせた、それだけの関係さ」
「・・・だったら、分かるだろ。
《補佐官》になれなかった僕が、重要な情報を持ってるわけない」
「ならば。
『採用された』のは、誰かね」
「え」
「『それ』は必ず、現在も生きて存在している。
おそらくは、”決して世界から出られない”という条件付きで。
だが、最低でも『不老不死』程度は、《管理官》から与えられている筈だ。
───『それ』は、誰なのかね」
「・・・っ!」
立ち上がった天使が。
カツカツとテーブルを周って。
僕の右肩に、手が載せられて。
無言のまま。
何の情念も含まない《暴力的な目的》が、鉄鎖のように絡み付いた。




