63話 Tears of Victors 03
慌てて、2つ先の教室へ飛び込む!
「先生、どうした!?」
「ひょええええ!!!」
マズい!
先生が、風船を縦に2つ繋げたような小さい奴等に囲まれている!
色は───青だ!!
とりあえず3体ばかり蹴飛ばし、距離を開けて。
「『炎の矢』!『炎の矢』!『炎の矢』!!」
ぷるうーー!ぷるるーー!!
鳴き声の可愛らしさとは真逆に。
奴等は街のチンピラじみた形相で向かってくる。
とにかく、連射だ。
連射!!連射!!
・・・ふう。
・・・何とか倒しきった!
「マッチャム先生、大丈夫か!?」
「ううう~~~!!」
突っ伏していた床から、のそり、と起き上がる『クマ』。
少し大きめの『ぬいぐるみ』にしか見えないが。
これが、俺の卒業時の担任、マッチャム先生だ。
「先生、単独で行動しちゃ危ねぇだろ」
「君のせいだよ!!」
ポカポカと、膝を叩かれた。
うん、全く痛くないが。
「何で俺のせいに」
「そろそろ君が来るだろうから、合流しなきゃと思って!」
「ああ」
「窓まで行こうとしてたら、団体さんに見つかっちゃって!」
「おう」
「ここへ逃げ込んで、死んだふりしてたのに!
スマホがブルブルしたから、気付かれちゃって!!」
「クマが死んだふりして、どーすんだよ」
そこは、しっかりとつっこんでおく。
相手が先生だから、物理的にはやらないが。
「───で、先生」
「なに?」
「今、『校長先生』復活から、どれくらい経ってんだ?」
「ええと・・・1時間ちょっとかな?」
「1階が制圧されるの、早過ぎねぇか?」
「あ~~。それはね・・・」
初級の『治癒』を自分でかけつつ。
マッチャム先生が、涙目になる。
路上に座り込んでいたら、間違いなく近所の女の子にお持ち帰りされる表情だ。
「『校長』の初期出現位置ってさ、統計があるんだよね」
「ほう」
「ボクたち教員は、それを元に1つの仮説を立てていたんだ」
「仮説?」
「うん・・・『校長』の初期出現位置は。
《1階のどこか。ランダムだけれど、職員室以外》、ってね」
「今回、職員室だったのか」
「だって、ズルいじゃん!
それやられたらさ!
生徒を指揮しなきゃいけない教員達が、校内放送すら出来ずにリタイアじゃん!
絶対に職員室だけは大丈夫になってる、と思うでしょ!?」
「まあ、確かにな。
だが、マッチャム先生は、よく脱出できたな」
「ボクは当時、職員室じゃなくて、生徒指導室にいたんだ。
ボクのクラスに、問題児がいてね。
体育のカイザー先生と、一緒に指導中だったから」
「ああ、思い出した!!『熱血皇帝』の!」
「あはは!その渾名、今の生徒達も使ってるよ~」
「じゃあ、残ってる教師は、マッチャム先生、カイザー先生だけか?」
「いや・・・ボクだけだよ。
ほら、1、2年生はシェルターに避難させるのが鉄則でしょ?」
「流石にこの行事は、キツいからなぁ。トラウマレベルだ」
「全員をグラウンド端のシェルターに逃げ込ませようとしてね。
カイザー先生は囮役を買って出て・・・400体以上と交戦・・・」
「・・・さらば・・・皇帝ッ!!」
「死んでないからねっ!?リタイアだからっ!?」