642話 最終決戦 06
───《We are Monsters!》。
───通称、《ウィーモン》。
遠く離れた日本の地で製作されたが、そこだけに留まらず。
世界各地で翻訳、吹き替えが行われている超ヒット作品。
ここハンガリーでも夕方に放映され、子供達に大人気のアニメだ。
ジャンルとしては、『現代を舞台としたファンタジー』だろうか。
様々な動物達が、故郷であるジャパネスタンを離れ。
出会いや冒険を繰り返しながら、モンスターアイランドを目指す、という物語。
主人公は、チワワの「たけまる」だ。
散歩中に野生の熊を倒してしまったことから、自分はモンスターだと確信。
人間と一緒に暮らしていてはいけない、とモンスターアイランドに向かう。
軽自動車くらいは、平気で横転させるような力を持っている。
ニワトリの、「ばるたん」。
ギリギリ飛べないけれど、それでもギリギリで何とかする、クールガイ。
プロバスケットチームの最終テストまで進んだが、入団できなかった。
モンスターアイランドで、メジャークラブの選手になるのが目標。
白ウサギの、「はなこ」。
優しい性格だが、実は「たけまる」より強い。
笑顔のまま、ニンジャのように一撃で、だいたい何でも失神させる。
危険すぎる為、普段は麦わら帽子を被ることでその力を封印している。
飛騨牛の、「りっきー」。
ビーフカレーだと偽ってチキンを入れていたのが発覚し、店を畳んで逃亡。
「ばるたん」とは仲が悪いものの、コンビを組めば無敵。
巨体だが電柱の陰にすら隠れることができ、よく行方不明として扱われる。
猿の、「けんすけ」。
《分別されていないゴミは持ち主に送り返す教》という、宗教団体の教祖。
それを『ゴミ荒らし』と見なす人間と、本当にゴミ荒らしする信者達に失望。
このまま環境保護を標榜するテロリストにはなりたくない、と旅に出る。
他にも、様々な動物が仲間として加わり、彼等の旅を彩ってゆく。
───デフォルメされたキャラクター達は皆、可愛らしくてコミカル。
───しかし、決してありきたりなストーリーではない。
子供の心を掴む愉快な冒険活劇を、メインとしつつも。
日常の『何故?』を、楽しく科学的に解説する。
時には社会問題にさえ、真面目に堂々と斬り込んでゆく。
子供を、”子供だから”と侮らず。
それより上の年齢層にも、”幼稚な内容だ”と思わせない。
絶妙な匙加減で仕上げられた、素晴らしいアニメ作品だ。
みんな可愛い。
とても可愛い。
動画サービスに加入し、月額を払うのは自然な成り行きで。
睡眠時間を削り、過去の放映分を《一気見》したのも当然。
くじを引くのだって、《ウィーモン》のファンとして何も間違っていない筈。
D賞のクリアファイルに関しては、主要キャラクターの全てが揃った。
C賞のキーホルダーも、保存用はともかく、『実用分』ならば確保できた。
───あとは、ポーチやバッグ、リュック等のB賞。
───そして、特大のぬいぐるみであるA賞は、絶対に欲しい。
自分の寝室まで連れ帰って、頬ずりしたい。
オークションで落とすなど、論外だ。
プライドが許さない。
ちゃんと、正当に正式にくじを引き。
この腕の中、『もふもふとした勝利』を抱き締めて眠りたい。
それこそが、ズィーエルハイト頭首としての、あるべき姿なのだ。




