638話 最終決戦 02
そりゃまあ、降下した僕らも苦戦はしたさ。
不意を突いたアドバンテージがあるとはいえ、場所が《本家》だからね。
《特別会議》の席上と違って、流石にあちらさんの数が半端ないわけだ。
『本家詰め』の連中は当然強いし、頭首の護衛役も、かなりの手練だった。
本家筋やら分家衆・筆頭なんかは、襲撃直後に始末出来たんだけども。
あの護衛2匹は、マジにヤバかったな。
大抵の『ウチ以外の吸血鬼』は、生まれつき強いから、努力なんてしない。
こっちからすれば、それこそが《隙》なのにさ。
真っ当に武術を修めるとかされちゃ、たまんないよ。
完全に足止めされ、ファリアと僕とで喰い殺すのに相当な時間が掛かったよ。
その間にシルミストの頭首は最後の護衛と共に、逃げ出しちゃってさ。
手が空かない僕らの代わりにダグセラン達、古参連中が追っかけたんだ。
───結局は、山中にて殺害成功。
猛進撃してきた、マイネスタン分家。
その頭首であるパルセム・マイネスタンと挟み撃ちし、バラバラに千切った。
最後のトドメは、あの『坊や』が刺したそうだよ。
重症を負いながらも喉笛に喰い付いて、胴体から外してやったんだとさ!
ダグセランはパッと見、軽薄でダラけた印象だけども。
その実、歴戦の猛者で戦闘指揮までこなせる、一番の古株だ。
彼が褒めるんだから、分家頭首の戦いっぷりは《本物》だろうよ。
正真正銘のズィーエルハイト、って事だよ。
「・・・それに引き換え、ウチの『狼』ときたら」
と、愚痴りかけ。
おっと、危ない。
失敗は繰り返しちゃいけない。
「いや、カールベンの奴も、一応は『戦果』か?」
「『大戦果』よ、間違い無く」
真剣な表情で、ファリアが断言する。
「まあ・・・ね。
《領地線破り》の報告を受けた時は、腰が抜けそうになったけどさ。
”大使館を作ろう”だのは、アレにしても。
持ち帰った情報は、《特級》だ。
とびきり貴重な《大ネタ》だよ」
「ええ」
「これから先、ガニアの奴等に。
『奇襲や電撃戦』以外で仕掛けるのは、絶対に避けるべきだ。
速攻で決着をつけて、5分以内に『こっち』へ戻ってこれなきゃ、『敗北』。
そういう心づもりでいたほうがいいな」
「───《対ズィーエルハイト専用》の、《防衛網》。
それが、領地内に構築された。
すでに稼働出来る状態にある、という事ね」
戦いの話となれば瞳を輝かせる、ファリアが。
本家頭首様が、まさかの溜息だ。
つまりは彼女の考えも、僕の予想と同じところへ行き着いた。
そういうわけだね。
残念ながら。




