62話 Tears of Victors 02
久しぶりの『実体』で、思う存分に飛行して。
着地と同時に、『人間形態』へと戻す。
───アンデルト・レンバー、第3初等学校。
この敷地内に、『実体』で入ることは禁止されている。
加えて現在は、卒業生以外の入校不可だ。
「さあて、行こうか」
ヒヨッコ共に、カッコイイ先輩ってものを教えてやらないと、な。
正面ゲートをスライドさせて、いざ、イベント会場へ!
「ぐはっっ!!」
ぶん殴られたような衝撃と共に、俺は弾き飛ばされた。
・・・はあ!?
・・・何で、入れない!?
・・・・・・あ。
『学校内、禁煙』。
ちっくしょう!!
タバコとライターか!!
これ、前にも、やっちまったんだった!!
───玄関はスルーして、校庭へと回る。
真っ向から入るのは、愚策。
まずは、校舎の全体像を把握するべきだ。
うむ。
レイアウトは、前回と変わってないな。
ただ、3階建ての校舎の1階部分は・・・。
殆どの窓が割れ落ち、何かが。
風船のような生き物達が、廊下を走り回っているようだ。
ぷるうーー!ぷるるーー!!
と、奇怪な声を上げながら。
「・・・もう、1階が陥落してんのか・・・」
これは良くない。
さっさと先生と合流しないとな。
そして、その合流手段だが───
この『特別行事』中、在校生以外は能力を制限される。
教職員は、『校長先生』の定めた規定値に。
卒業生は、卒業時点での能力値に。
体力、魔力。
使用可能な魔法までも、戻される。
初等学校、学生レベルにまで。
・・・2階へ侵入するには、『飛行』の呪文で・・・。
いや。
もっと簡単なやり方がある。
在校時、遅刻しそうになった時にやっていた方法だ。
「よいせっ、と」
単純に、跳躍すればいいだけの話。
ははは!
これぞ、竜の身体能力!!
たまたま開け放たれていた窓から飛び込み、華麗に身を起こす。
周囲に敵対的存在、無し。
オーケーイ!!
後は、先生の捜索。
「ふっ・・・我に、秘策あり」
誰にともなく、呟いてしまう。
ここで『捜索』だの、『通話』だの。
そういうのは、素人のやる事。
デキる男は、文明の利器を使う。
スマートに、スマートフォンを使用するのさ!!
・・・ほらな、思った通りだ。
取り出したスマホは、しっかりと電源が入ったままだ。
このご時勢、校則でも認められているはず、と持ち込んでみて正解だった。
マナーモードなら所持を許されているみたいだな。
素早くスマホを操作して、先生にメッセージを書く。
そして、送信。
向こうもマナーモードだろうが、気付いてくれるか?
───5秒、経過。
ん?
気付いてないか??
「うひゃああああ!!!お、おたすけええええええ!!!」
絶叫が、響き渡った。