637話 最終決戦 01
【最終決戦】
「ねぇ、こういう事を言っちゃうと、君は怒るかもしれないけども」
どふん、とソファに腰を沈め。
一応は最悪の事態に備えて、相手の顔色を窺う。
分かってるさ。
危険な発言だとは分かってるが。
それでも正直な意見というか感想として、これだけは述べておきたいんだよ。
「何かしら、クライス」
「・・・・・・僕、《マイネスタン分家》の頭首は、ダメだと思ってたんだよね」
「──────」
「やッ、違う違う!最後まで聞いてってば!」
案の定だよ!
無言で怒りを溜め始めた頭首様に、慌てて弁明だ!
「ちゃんと、ズィーエルハイトの一員だって認めてるよ!
本当だよ!
でもさ!
《マイネスタン頭首》としては良くても、獣狼族なわけで!
それも、眷属化してない『素』の状態だろ?
戦力的にどーかな、って、」
「遥か昔からズィーエルハイトは、平等に、皆が弱いわ」
「うんうん!その通りさ!
僕だって、思い上がってはいないよ!
それに、”ダメだと思ってた”、って言っただろ?
過去形だから、過去形!
今は違うから!」
「──────」
おっかないから、やめてくれ!
僕が悪かったって!
「何の文句も付けられない、『大戦果』だよ。
ダグセランの奴も、しきりに感心してたし。
”《激戦時代》が思い起こされるような、凄まじさだった”。
”けっしてズィーエルハイト以外には出来ない、戦い振りだった”、って」
「ええ、そうね。
私も彼を見習って、気を引き締めるべきだと感じたわ」
「・・・・・・うん」
君の場合は、大丈夫だと思うよ。
十分、どこにも隙が無いよ、呆れるくらいに!
─── 【ズィーエルハイト領・マイネスタン分家】の誕生。
───そこから間髪置かず、シルミスト家は滅んだ。
領土を奪った、奪われたというよりも。
シルミストに連なる吸血鬼が、全て。
傍流のそのまた端に至るまで、完膚無きまでに打倒され、滅亡した。
向こうにとっては領地線を跨いで、ダラダラと居座っていた軍勢。
それが突然、担いでいた旗印を、まるっと変更し。
”進め!!”
”殺せ!!”
”ジーク・ズィーエル!!”
と連呼しながら、全力で攻め上ってきて。
浮足立ったところを、クロウゾルド卿の率いるハルバイス家が横からブン殴り。
おまけに、そのドンピシャのタイミングで、《アレ》だ。
僕らのとっておきである《直上降下作戦》で、本家を強襲だよ。




