633話 no malice 04
「・・・とにかく、そこに《仲間》が居るのは確認したよ」
数歩先の右側にある建物を、顎で示し。
胸の内の様々な感情を抑えながら、言葉を振り絞った。
「アンタの話が、丸ごとデタラメだったとしても。
それだけは事実だ」
「───私は全て、本当の事を話している」
「そんな言い分を、容易く信じていいような関係か?」
「──────」
天使は、無言。
それだけだったら、こっちも完全に無視したろうけどさ。
ヤツの表情からは、明らかに納得できていないのが透けて見えた。
”自分は真実を喋っているのに”。
”何故、こいつはそれを信用しないのか”、と。
本気で訝しんでいる。
腹が立つどころじゃあない。
《散々殺してきたことで恨まれてる》など、微塵も思い当たっていないのだ。
天使にとってはそれくらい、僕らを殺すことが当然で。
理に適っていて。
頼みごとをする立場になっても、根本的な考えを修正しない。
口先だけでも取り繕うという、ズルさすら見せやしない。
だからこいつは、さっき。
僕に言いやがった。
───”《規格外品》を『削除』した”、と。
───人数じゃなく、『回数』で示しやがったのだ。
「まあ、どうせアンタには、何を説明しても無駄だろうな」
「──────」
「『分からない』なら、そのままで結構さ。
けど、な」
それだったら。
それでも。
「じゃあ・・・取り敢えず、死んでくれよ」
「──────」
「ほんの少しの優しさ、みたいな。
理由不明の善行みたいな。
そういう『美談な方向』に持ってかれるのは、絶対にゴメンだね。
虫酸が走る。
吐きそうになる。
『分からない』でいいぞ?
『分からない』まま、何はさておき、死んでくれよ」
「───私は、」
「うだうだ言うなッ!!
今すぐ、死ねッ!!」
「───私が死んでみせれば、彼女を助けてもらえるか?」
「ああ、そうだよ!!
引き換えに助ける、って言ってんだ!!
理屈なんて、どうでもいい!!
感情じゃなく、現実として!!
《命》に値するのは、《命》だけだ!!
他には一切無い!!
それが『殺す』ってことの意味だ!!
いいから、さっさと死ねッ!!
早くしろよッ!!」
「──────了解した」
ガラス玉のような目で、ぼんやりと僕を見つめ。
何故、僕が激昂しているかも『分からない』様子の天使が、動いた。
左手を、心臓の位置へ。
もう片方は、側頭部に当てて。
一瞬の間を置き、ごとん、と倒れた。
男は、痙攣の一つもせず、動かなくなった。
ガラクタの散らばる地面に、じわり、と鮮やかな赤が広がった。




