61話 Tears of Victors 01
どうして、こんな事になったんでしょうか・・・。
(何故、私はこんなお話を書いたんだろう・・・?)
【Tears of Victors】
───突然の事態。
それは文字通り、予期せぬタイミングで起こる。
発覚する。
知らされる。
『日常』という時間の流れに、鋭く切り込んでくる『非日常』。
訪れたのが吉報にせよ、そうでないにせよ。
それを受け取った者が、どう対処するか。
いや、『リアクションするか』。
───ドラマのように。
───映画の、ワンシーンのように。
「・・・マギル君、『非常事態』だ」
「気持ち悪いので、やめてください」
即答だ。
俺の『デキる上司』的な発言は、間髪入れず粉砕された!
「───それで?『非常事態』とは?」
「すまん。真面目にやる」
冷ややかな秘書の視線を浴びながら、スマホの画面をスリープさせた。
「地下室の封印を破って50年ぶりに復活した校長先生が、暴れている」
「──────」
「暴れ回っている」
ノートPCを操作していた指が止まり。
溜息が聞こえた。
うむ。
これは貴重なシーンだ。
マギルが溜息をつくなんて、そうそうあることじゃない。
「事情を知らない者が聞けば、発言者の正気を疑うでしょうね」
「そうだろうな。
だが、事実だ・・・今、昔の担任から連絡が入った」
「たしか、ボスの母校の『特別行事』でしたか」
「あれを『行事』と呼ぶのは、無理がありすぎだ。
どう控えめに言っても、『災害』だな」
『あれ』に、決まった周期は無い。
無いが、大体、30~60年に1度、らしい。
「在校生は必然的に、『初見』だ。対処は難しい。
そこで卒業生の出番なんだが・・・今回は集まりが悪いらしいな」
「それでボスに要請が来た、と」
「まあな。俺も、ここ200年くらいは参加してなかったんだが」
とりあえず。
スーツのポケットから、ありったけの所持品を取り出してデスクに放る。
卒業生といえど、『学生レベル』を超えた魔法具は持ち込めない。
───ソロモンの指輪、不可。
───障壁殺し(ペネトレータ)の呪符、アウト。
───姉貴から貰った、対炎のネックレス、論外!
───近所のバーガーショップの割引クーポンは・・・。
やばい。
そっと、上着のインポケットに戻す。
「・・・ボス」
「な、なんだ?」
「本日の、これからの予定は」
「キャンセルで!」
「──────」
「いやあ、久しぶりの我が母校だ!
先生、元気かなー!緊張するなーー!!」
「──────」
「行ってくる!後は頼んだ!!」