619話 助けなくもなし 04
「ド畜生!流石は本物の悪魔だよ!
よくも、こんなデンジャラスな『拷問』を考案しやがって!」
「俺はただ、事実を言ったまでだぞ?」
「いいや、まだ確定じゃないねッ!
マリーから直接、《自分はブラコンだ》と聞くまではッ!」
「それ、確認を取るつもりが微塵も無いだろ。
”医者に行かなきゃ病名が付かずに済む”、ってヤツか?」
「『逃げていい事からは逃げる』、これが僕の信条だ」
「へぇーー。
そりゃあ、マリーと付き合ってんのは俺だからな。
アンタからすりゃ逃げずに戦う必要は無い、っちゃあ無いけども」
「そうさ!そういう事さ!」
「なら、『逃げられないほうの話』もしようか?」
「・・・ん?」
何だ??
顔より下に固定した視界。
ピアーゾが胸の前で、ゆっくりと腕組みするのが見えた。
「・・・知ってんだぜ。
アンタさ。
うちの姉ちゃんを、狙ってんだろ?」
「・・・え?」
「メシ食いに行ったり、テーマパークで遊んだり。
ギリギリ、デートと呼べなくもないくらいの付き合いをしてるみたいだが」
「ちょッッ!!おまッ、お前!?
まさか、ヒルウィーリの!?」
「ああ。
弟だよ。俺、一番下の弟さ」
「マジかッ!?」
「そして、な。
姉ちゃんにとっては、アンタも『弟』だぞ?」
「・・・そ、それは・・・」
「俺のところの男キョーダイは、みんな《こういう顔》だ。
姉ちゃんはそれに慣れてるし、優しいから色々と手を貸してくれるよ。
『姉と弟の関係』として。
即ち。
一旦『弟ルート』に突入したら、もう最後。
たとえ親愛の情で額や頬にキスされることが、あったとしても。
《そこから先》は絶対に無い、ってこった」
「・・・弟・・・」
「はは、残念だったな。
無理せず逃げていいぜ?アンタの信条通り」
───何となく、いつかは何とかなると期待していた、僕の『未来予想図』。
───それが無情にも、端から端まで真っ黒に塗り潰されて。
ガタン。
座ったままで椅子を引き。
テーブルに突っ伏すしかなかった。
つまり、完全に『KO』されてしまった。




