表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
616/743

614話 Bloodline 06



左袖を引いたのは、気付かない内に移動していたリーシェン。



「・・・すぽんさーとして、要求する。

『見せ場』のキャスティングは、とてもだいじ」


「え?」



そして、右袖は───パルセム。



「形式だけじゃなくて、頭首はボクだよ、リグレット。

一族の最終決定権は、ボクにある筈でしょ?」


「・・・・・・」


「こんな大切な事は、ぜひ頭首にやらせてほしいな」


「・・・パルセム・・・」



思わず抱き締めたくなる、ふわふわの笑顔。


それが瞬時に、きりり、と引き締められて。




「───我々は。


現時点で保有する『樽』を、全て破棄する。

これ以降は、《奪ったものではない血》のみを糧とし。



【ズィーエルハイト領・マイネスタン分家】を名乗ることとする」


「・・・・・・」




どうしたって幼さはあるけど。

よく通る、力強い声での宣言だった。


名乗らせてほしい、という『お願い』ではなく。

名乗るぞ、と言い切った。


一々、皆の意見を確認するまでもなく。

それを全部分かった上で、自分の裁量をもって決定した。


ああ。

私の、可愛いパルセムが。

こんなにかっこいい、本物の頭首として振る舞うなんて!



ヤバい!

これもう駄目、我慢出来ない!


今すぐ『ちゅっちゅ』したいッ!!




「───(よろ)しい。

ズィーエルハイト頭首として、我等一族の新たな《誕生者》を歓迎する」



向こうも、パルセムと同じ。

郎党の誰とも話さずに、はっきりと結論を口にしてきた。



「領地が離れていようと、我等は共にズィーエルハイト。


弱者の為に強者を屠らんとする、《暴力装置》。

ハンガリーの吸血鬼達を震え上がらせる、【気狂いのズィーエルハイト】よ」


「頭首、ファリア。

まさに。

それをする者が、する者だけが、【ズィーエルハイト】だ」



私は、パルセムを眷属化(吸血)していない。

だから、あの子は吸血鬼じゃなく、獣狼族(ライガルフ)のままだけどね。


そういうのはもう、関係無くなった。

種族自体が、どうでもいい事だ。


パルセムが返答したように。

ごく単純に、行動する者こそが【ズィーエルハイト】なのだ。




───ファリア頭首とパルセムが、握手を()わして。


───そのまま、流れるように抱擁した。




いや、ちょっと!!

私の坊やに、何やってくれてんの!?


何が『見せ場』よ!!


あああああ!!

長い!!

ハグが長すぎだってば!!


ギリギリか!?

これ、ギリギリでセーフか!?


いやらしい気持ちとか、微塵も入ってないわよね??

『親愛の情』だけだよね??


ちっくしょう!

セーフか!!


だったら、セーフがアウトに変わらないうちに!

(しか)るべき手を打たなきゃ!



───動け、私ッ!!


───ジーク・ズィーエルッ!!



横合いから思いっきり、私がファリアに抱擁し!!


物理的に、正式に、完璧に()めさせればいいんだッ!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ