表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
595/742

593話 スター誕生 04



「つい最近まで、わたしは───あまり付き合いの良い方ではなくて。

エルフという集団の中、浮いていると自分でも感じていました」



しがみついた腕を離さず、イエリテ殿が言う。



「伴侶を得て、子供を産み、家庭を築く。

そういった皆の『当たり前』も、どこか遠くの世界のようにしか思えず。

惰性のまま生きて、いつか終わりの日が来るなら、それでもいいか、と。

(あらが)わずに受け入れればいいだけだと。

希望や願いを持たないまま、全部諦めて暮らしていたんです」


「ふむ」


「けれど───今は違います。

フォンダイトさんが元首として訪れてから、変わりました。


《生きている》のではなく、《生きていたい》。

《一人では寂しい》という感情さえ、芽生えたんです。


子供も、たくさん欲しいです」


「うむうむ。

それは良いことだな、イエリテ殿。

前向きで建設的な思考は、私としても非常に好ましい」


「『好ましい』ですか?」


「まったく、その通り。

エルフ族の未来をどうするか、そこに自分を含めて考える事は重要だ。

真の解決へ至る為には、他人事のような俯瞰であってはならぬ。

私自身も、貴女と同じなのだ。


《自分がエルフであるなら》。


そもそもの基準をそこに置くことで、高い垣根を越える。

種族や慣習に捕らわれず、相互理解を深めてゆく。


まさに今、それをイエリテ殿と行っているところであるな」


「───では、もっと深く知り、分かり合いましょう」


「うむ」


「わたし達が、《エルフと天使の新しい関係》を創りましょう」


「ああ。その意気や良し」


「ですから、その」


「うむ?」


「今夜───わたしの、部屋に───」


「ん?」



何故か急に小さくなった言葉を聞き返そうとした時。


ぱっ、と彼女の体が離れて。



「??」


「おーーい!!

イエリテさーーん!!フォンダイトさーーん!!」



遠方から名を呼ぶ声。


振り返れば、こちらへ向けて一直線に走ってくる、残像のような影。

幻かと疑う暇も無く、それは風をまいて飛び込んで来て。


私達の目前で急停止した。



「やっと、見つけた───ここだったか───!」



上半身を折り曲げ、荒い息遣いで膝に手をつく若いエルフ男性。


凄いな。

耳にピアスというのも、エルフとしては奇抜だが。

サンダル履きで、あんな速度が出せるものなのか。

精霊の力を借りているにせよ、凄まじい身体能力だぞ。



「どうしたんです、カトルーノ?」


「マズい事になった───緊急事態だ!」



イエリテ殿の問いに、呼吸が整わぬままの男が汗を滴らせて叫ぶ。



「森の入り口に、天使が来てる!」


「え!?」


「そんでもって、そいつが!

フォンダイトさんを呼んでるんだよ!」


「!!」



むむ!?


私を!?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
、、、天使が?遅いけど捕縛しにきたのかな?それとも例の「作られた天使」かな? 、、、なんも分かんないな。次が楽しみ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ