57話 神より奪いし花束 06
「・・・しかし・・顔が・・・!!」
「ああ・・・顔がっ・・・!!」
「もしや、1650年代に観測された・・・」
「まさか!!『The Faceless』かっ!?」
「いや、待て!それは早計に過ぎますぞっ!!」
「しかし、記録との類似点が!!」
・・・ねえ。
爺様達。
元気を分けて。
ハゲはいらないから。
ちょっと僕に元気、分けて?
“見たい”───“見テハダメダ”
“見えない”───“見テハダメダ”
召喚陣の内側からの重圧。
衝動的に上がりかける、視線。
その板挟みで。
僕はもう、窒息寸前だ。
「・・・皆、静粛に!!」
低く、鋭い叱咤が耳を打つ。
これは、リスヴェン枢機卿の声だ。
Top of Top───次期法王の、最有力候補。
通称・後頭部禿げ。
「マーカス君。一時的で構わない。
その悪魔に対する『命令権』を、我等に譲渡することは可能かね?」
「───ハイ(いいえ)」
脂汗が、ボタボタと床に滴る。
「───ドウゾ」
「ん・・・?もう終わったのかね?
確かに、我々のほうへ移したのかね?」
「───ハイ(いいえ)」
・・・あのね。
これ、秘密なんだけど。
そもそも、無理なんだよね。
この召喚陣は、『バルスト専用』でして。
そのバルストが、速攻でバックレまして。
入れ替わりに来た『大悪魔』と僕は、無関係なわけで。
・・・つまり。
小指の先ほども、制御出来てないんだよね!
あちらさん、陣の外にも平気で出られるんだよね!
ははははは!
どうせ部屋の外には、『秘匿部隊』の方々が待機してるんでしょうけど!
無理ですよ!
どーーにもなりませんねぇ、これ!!
「・・・では、現われし悪魔に問う。
そなたの『真名』は?」
答えて!!
適当でいいから、何か言って!!
「───ギリアム───」
The Faceless・・・ギリアム・・・。
誰かが呟き、またざわめきが広がり。
リスヴェン枢機卿の咳払いが、それを打ち消した。
「ギリアムに問う。悪魔の存在意義、目的は何だ」
「───問う気の無い質問に、答える道理は無い」
「何だと?」
・・・ごめん、ハゲ!
怒らないで!
コレ、コントロール出来てないから!
おとなしくしてて!!




