585話 命を大事に 04
「まあ、私だって我が身が大切だからねぇ」
フォークを使わず口へ運ばれてゆく、ハモンセラーノの束。
顔こそ赤くなっていないものの、十分に酒臭い。
まるで居酒屋に居るおっさんみたいな、コブジュツ・マスターだ。
「彼女のストレス発散で手足を折られるとか、御免被るよ。
マーカスだって、格技講習で痛めつけられるのは嫌でしょ?」
「そりゃそうだ」
僕の場合、そうなるように豚野郎が仕組みそうだが。
「カトリックの教義と、それを仕切っている『上層部』。
言ってやりたい事も叶えたい事も、沢山あるけどね。
まずは、私達が無事に人生を全うするのが前提だよ」
「ああ。怪我なんて勘弁さ。
自己犠牲のヒーローに憧れてるわけじゃないからな」
「やっぱり、そこを忘れちゃいけないんだよ。
理想郷の礎となる為、二人揃って殉死して、じゃあ意味が無い。
《幸福度》の世界平均を1ポイントでも、2ポイントでも上げる。
上手くいったら、お高い店で祝杯だ。
それくらいの感じで、やれるだけをやろう。
やれないなら無理せず、遠回りする道を考えよう」
「同感だ。
仲間がいるからこそ、一人で勝手にくたばりたくない」
「うんうん!」
「今回は本気で危ないところだったな、同志シンイチロー」
「2〜3㎏くらい痩せたかもしれないね、同志マーカス」
「ないない、それはない」
「あ、そうだ。
私もあれから無事、『騎士団』に入団できたよ」
「おおっ!
これで『人間の団員』は二人目だな!」
「あはは。
早速、見たよ・・・アレ。
マーカスの言ってた、《ドラゴン死闘編》」
「どうだった!?」
「君、とんでもないものを教えてくれたねぇ!
講義してる最中に思い出して、いつも大笑いしそうになるんだけど!」
「だろ??いいよな!?凄いよな!?」
「ドンソン司祭のセンスって、飛び抜けてるというか、振り切ってるというか。
私、考えたんだけどね。
あのキャストを一部変更してさ。
《法王死闘編》にしたら、どうなるかな?」
「───ばぶうッ!!」
堪えきれず、カモミール茶を噴出。
駄目だろ、それ!!
完全にアウトだろ!!
我等のドンソン師がwww
法王猊下を論破なさってしまうwwwwwww




