56話 神より奪いし花束 05
“アルコールを摂取したならば、車両を運転してはならない”
これは、世界においてほぼ、どの国でも施行されている法律だ。
飲酒運転の定義。
違反者には当然、様々な刑罰が課せられる。
───では、摂取してしまったら、どうするか?
宿泊は、したくない。
車両があるが、乗ったらアウト。
でも、自宅に戻りたい、という場合は?
───『代行運転』という、サービスはある。
しかし、その料金さえ払いたくなければ?
身内や、友人に頼むか?
もしも、自分が何らかの組織に属しているなら?
一体、誰に頼むのが適当か?
正解は。
『同僚』か、『部下』だ。
僕は、胸を張り。
自信を持って答えよう。
───『同僚』か、『部下』だ。
───それが、この世の真理なのだ。
「おおお!!こっ、これは・・・・!!」
「これが、『悪魔』なのかっ!!」
豪勢な椅子に腰掛けた爺ぃ達が、一斉にどよめく。
「凄いっ!!これは素晴らしいっ!!」
「我等は今、歴史的瞬間にっ・・・・!!」
うあああああああああ!!!!!!
馬鹿やろおおおおおおおお!!!!
バルストッ!!!!
また、やらかしやがった!!!!
お前!!
『代わり』を!!
『よこす』って言ったよなッ!?
確かに、言ったよなあッ!?
それで───何で!!
『上司』を『よこす』んだッ!?
そこは普通、お前の『部下』だろう!?
いくらお前でも、頼みを聞いてくれる手下くらい、いるだろ!?
『イタリアン・マフィアごっこ』の、お仲間はどうしたッ!?
鉄砲玉でも何でも、こっちに送れよッ!?
スーツでいいよッ!!
何なら、マシンガン構えててもいいよッ!!
ははっ。
はははははっ。
笑いが、声にもならない。
───ああ。
神は、我を見捨て給うたか。
一応、お尋ねしたいのですが。
妹の魂は、受け取ってくださったでしょうか?
領収書とか、頂けませんか?
溢れる涙で。
僕には悪魔の顔が、『見えなかった』───




