表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
570/743

568話 Special Worker 01


【Special Worker】



基本的に生物というものは、存在を維持する為に何らかの努力が必要だ。

生き残るべく、(かて)を得るべく。


『何もしない』では、どうにもならない。

そこに()るだけでは、捕食されるか餓死するかで、呆気なく終了する。


頑張っていないように見える植物すら、その内側で様々な事が行われていて。

《二足歩行者》であれば、しなければならない事は更に増える。

したい事だって、次から次に出て来て当たり前。


そして、より良く安定した生活を望むなら。

努力を『貨幣価値』に変換する手段が、どうしたって必要となってくる。



───けれども、おいらの場合。


───大体にして、暇だ。



殆ど仕事が無いから、忙しくないし。

2〜3週間、一歩も部屋から出ないことだって、ザラだ。

真っ当に働かなくていい。

やりたい事に掛かる『膨大なコスト』も、自分で払わなくて良い、ときている。


そりゃあ、楽と言えば楽だけど。

その代わりに誇り(プライド)なんてものは、バッサリ捨てなきゃいけない。

大きな顔して肩で風切って歩けると思ったら、大間違いだ。

控えめに、目立たぬように、ひっそり生きるのがデフォルト。

そして、『食わせてくれている』皆様に、感謝の心を忘れてはならない。


これ絶対、大切。



まあ、おいらに大層な仕事が無いのは、当然だ。


大抵の事が出来ないから。


無駄に肥え太った体型のクセして、重い物ひとつ抱えられない。

走れば転び、跳べば着地に失敗。

じゃあ頭が良いのかというと、そっちも自信無し。

興味を持てない事柄(ことがら)()てがわれると、全然集中出来ない。

やりたい事をやりたいようにしか、やれない。


そこに追加して、もひとつ駄目なのが。



───おいら、クソ弱い。


───デタラメに、呆れ返るくらいに弱い。



ハンガリーの《弱者集団》たるズィーエルハイトにおいて、断トツの弱さ。


これ即ち。

全世界の《吸血鬼》の中で、最弱!!



腕力が皆無で、俊敏性が皆無で、持久力が皆無で。

魔法まで『からっきし』ときてる。

肉体再生力すら、有るのか無いのか分からないレベル。


”具体的にどれだけ弱いか”、って?



人間の───10代後半のお兄ちゃん2人組に、ボコられたことがある。


何ら抵抗出来ず、延々と袋叩き。

文字通り、サンドバッグ状態。

そして結構な重傷を負って、からくも仲間に救出されましたよ。



正直に言うとアレ、相手が1人でも勝てなかった。

余裕でやられてる。

人間に負けるような吸血鬼なんて、普通はいないさ。

有り得ないっての。


遥か昔。

ズィーエルハイトが『三家合同』に侵攻された、あの日。

おいらが生き残れたのは、あまりに弱すぎたから。

ワンパンで吹っ飛び、再生能力が低すぎて『死んでる』と誤解されたからだ。


うん。

しみじみと思うけども。

おいら、生まれる家を間違えてたら、速攻で追い出されてるよ。


こんな穀潰しを抱えてくれる所なんか、他には絶対ありゃしない。

散々馬鹿にされるか、徹底的に無視されまくって。

結局、自主的に棺桶引いて『出家』せざるを得なくなり。

ヤケクソで血を吸おうと人間を襲えば、返り討ちの憂き目だ。



どう考えても、野垂れ死にの末路しか浮かんでこないな。


ここまできたらもうコレ、『自慢』だけどさ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ