55話 神より奪いし花束 04
「───それでは、召喚を開始いたします───」
「おお・・・!」
「ついに、この時が!」
「ワシはもう楽しみで、楽しみで!昨晩は殆ど、眠れなかったわ!」
「いやあ、分かります!分かりますぞ!」
「───各猊下におかれましては、しばし御静観のほどを───」
ごくり、と。
生唾を飲み下す音がした。
豚め!!
僕の前で、『寝てない自慢』をするな!!
こちとら任務明けの直行で、『絶賛・残業中』なんだよ!!
ああ、時間が無い!
無いが、最低限の事情と方針を伝えなきゃいけない!
《・・・バルスト。聞こえるか、バルスト?》
『本召喚』の前に、精神接続で呼び掛ける。
《バルスト!》
《───ん───》
《緊急事態だ!僕は今、危機的状況だ!》
《───ああ───またお前か・・・》
《いいか!良く聞け!
一度しか言わないから、ちゃんと覚えろ!!》
《つくづく、タイミングの悪い奴だな》
《聞けよッ!!》
《何だか分からんが、今回はパスだ》
《新発売の『人肉バーガー』かッ!?》
《違うって言ってんだろ・・・今、俺は物理的に動けない》
《何でッ!?》
《傷だらけの勇者だから、だ》
《冗談は寝て言えよッ!?》
《いや───寝てんだよ。で、動けねぇんだよ、完全に》
《はあ!?》
《まあ、落ち着け。
俺とて、愉快な相棒のピンチを放っておくほど、無慈悲じゃない》
《分かった、すぐ来い!》
《代わりをよこすから、Good Luck》
《おい!?ちょ───ちょっと待てッ!!》
《──────》
《おいいいいいッ!!??》
接続が一方的に遮断され。
同時に、召喚陣が輝き始めた──────




