566話 Bedtime story 02
「───さて。お前が眠りにつくまで、寝物語でもしてやろう」
「あー、アレか。
何か意味深で、薀蓄があるようで無いような、よく分かんないやつ」
「そうだ。いつものアレだ」
少々げんなりした様子の男が、小さく溜息。
隣に横たわった女は気にしたふうもなく、軽く目を閉じて話し始める。
「───昔々、あるところに『天使』がいた。
彼女は美しく、聡明で。
仕事が良く出来る上に真面目で、歌も上手く。
おおよそ完璧な、誰にでも好かれる素晴らしい『天使』だった」
「へぇ」
「その天使は普段、自分だけで職務をこなすのが常だったが。
ある時、たまたまもう一名と組むことになった。
その相手もそれなりに優秀だった為、仕事はすぐに終わった。
終わりはしたのだが。
帰還する直前。
彼女の相方が、《規格外品》を発見してしまった」
「何だよ、《規格外品》って」
「一部の例外を除き、大体の見た目は『人間』なのだがな。
ちょっと壊れていて、人間には本来備わっていない、特殊な力を持っている」
「ん・・・それは、超能力みたいなもん?」
「一般的に『超能力』と言われるものより、危険度が高いな。
公になってしまえば、病院か何処かの研究所に一生閉じ込められる。
そういうレベルの『危ない力』だ」
「ふーーん」
「天使の中には、そういう《規格外品》を探して『削除』する専門部署があって。
彼女らの仕事はそれと無関係だったが、『削除』は全天使の義務でもある。
だから。
ちょっとした点数稼ぎで相方が、《規格外品》を『削除』する時。
彼女は、特段に思うところはなかった。
自分が先に取ってやろう、と急く事もなく。
したいようにすればいい、と放っておいた。
本当に、どうでも良くて。
考えていたのは、仕事の報告書。
それを如何に整然と纏めるか、だけだった」
「・・・・・・」
「それなのに。
ふと気付けば、死体は2つ。
彼女は、どうしてか。
《規格外品》を『削除』した相方を、殺害してしまったのだ」
「・・・は??」




