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563話 聞いて 〜Road to Death 05



「一番年寄りのお祖父ちゃんが、よく言ってたっけ。


アメリカ大陸も、オーストラリアも、ヨーロッパも。

ほんっとロクでもない所だったけど、『故郷』よりはマシだ、って」



眉間の端と端ほどに離れた目を細め、『化け物』が疲れたように微笑んだ。



「安心していいわよ。

みんな消えてしまって、《これ》はもう、私で最後なの。

この地に住む者は、そもそも《これ》の成り立ちを知らないから。

私が殺せる数も少ないと思うわ」


「・・・・・・」


「さてと。そろそろ、戦争の続きをやりましょうかー」



小さな山がうねる如く。

《それ》は各所の関節を無視して()じれ、一段と(ふく)れ上がる。



「吸血鬼ちゃんは、明日の今頃には復活するわ。

私の中にある『樽』に、漬けておいたから。

ただし中身は、人間の血液じゃないけどねー」


「・・・お前・・・」


「さあ、殺し合いの時間よ、御頭首様。


大丈夫!

《これ》って、吸血鬼ほどは強くないから!


斬って刺して叩き潰せば、ちゃんと死ぬわよ?

そういうのが当たれば、の話だけどもー」


「・・・お前は、何が目的だ?

我等シルミストから何を奪いたくて、こんな事を?」



───こんなものと戦いたくない、関わりを持ちたくない。


───可能な限り速やかに、停戦してしまいたい。



怯えを悟られぬよう、強めの口調で問い正したが。



「あんた達が持ち合わせてるものに、興味なんか無いわ」


「・・・・・・」


「戦いましょうよ、早く、早く。


《Love and War》 ───それだけが、私の願いなのよ。


あははHAHA!!」



くそっ!

もうたくさんだ。


こんな気狂いに。

《ズィーエルハイトもどき》に、付き合っていられるか!



「・・・殺せっ!殺すんだっ!!

マイネスタン共を全て、領地から叩き出せっ!!」



出来る筈もない事を、大声で命じ。

そうしながらハスバル・シルミストの脚は、じりじりと退()がってゆく。


危険だ。

頭首たる自分が、ここにいてはいけない。


さっさと屋敷に戻り、温めたワインでも(あお)って。

今夜の事は何もかも、忘れてしまいたい。


《弾丸》に支払った200万ドルは、水の泡となり。

消えてほしかった『幻想』だけが尚も、戦場に残り続ける喜劇。

こんな現状から、責任から、一目散に逃げ出してしまいたい。



もういっそ、スロバキアの勢力に(くだ)ろうか。

一族全員で。


護衛達に囲まれ、後退しながら。

そんな考えさえ、頭の中を()ぎり始めた───


(注意!!)

彼女は何故、『語った』のか。


ここから下は、楽しくない『裏話』です。

読むと気分が悪くなるでしょうし、読まなくても大丈夫。

これから先の物語に関わる事もありません。


メンタルが弱っている方は、やめておきましょう。


警告しましたからね?



作者:「───リグレットさん」


??:「なぁに?」


作者:「私、《それ》の名前、分かっちゃったんですけど」


??:「へーー!凄い凄い!言ってみて?」


作者:「言いませんよ」


??:「あー、即死だもんね。怖くて言えないか」


作者:「ええと。そこからして、おかしいんですけどね」


??:「うん?」


作者:「私にはどうしても、『言いたくない者に言わせる』方法が分からない」


??:「うん」


作者:「でも、そんな方法は無いんじゃないかな、嘘じゃないかな、と」


??:「・・・・・・」


作者:「種族名を言えば、死ぬけれど。実はそれ、『即死』ではないんじゃ?」


??:「・・・・・・」


作者:「私は順序立てて説明出来ないけれど。多分、正解したと思っています」


??:「勿体振らずに、さっさと言いなさいよ」


作者:「一番最初、この世に現れた時。《それ》には名前が無かったのでは?」


??:「・・・・・・」


作者:「正確には、《名前のようではない名称》しかなくて。人間達は、それを使っていた」


作者:「そこへ貴方達の一族が、人間に化けて接近して。まずは、『嘘の名前』を教えた」


作者:「それを『本当の名前』だと誤解させる為に、偽装工作はしたと思います」


作者:「うっかり口にした者を、殺してみせたり」


作者:「もしくは、言ってもいない者を真夜中、誰も見ていない所で殺したり」


??:「・・・・・・」


作者:「そして頃合いを見て、貴方達は入れ知恵する」


作者:「”絶対に名前を言ってしまわぬよう、別の呼称に変えよう”、って」


作者:「───それこそが、『本当の名前』です」


作者:「実際は『言うと即死』じゃなく、『言ったらいつでも殺せるようになる』」


作者:「人間達はみんな、安全だと思って『本当の名前』を口にした」


作者:「だから、いつでも殺したい時に殺せる」


作者:「追っ手の七人だって、きっとそれまでに言ってしまっているから、アウト」


作者:「いたぶって一人ずつ殺したか、面倒だからまとめて殺したかは不明ですけれど」


??:「それ、全部あんたの想像よね?証拠が無いじゃん」


作者:「ええ、想像です。でもね」


作者:「証拠なんて、残ってるわけありません」


作者:「人間に化けて名前を流布したなんて、バレなきゃそれまででしょう?」


??:「・・・・・・」


作者:「───当たってます?」


??:「・・・まあ、7割くらいは。違うトコロもあるけど、大筋はそんな感じ」


作者:「───ふう。ギリギリ、恥をかかずにすみました」


作者:「それなら、もう少しだけ補足しておきますね」


??:「何を?」


作者:「《それ》の原産が、極東のどの国かは特定出来る材料が無いけれど」


作者:「私が生まれ住んでいる国において例えるなら、何なのか」


作者:「ミステリオスとして発生する切っ掛け、モデルになったものには予想が付きます」


??:「・・・・・・」


作者:「私は、XXでXXました」


??:「・・・は?」


作者:「XXでXXました」


??:「何で伏せるのよ?」


作者:「可能な限り、明確にしたくないからです」


??:「・・・・・・」


作者:「私はその時まで知らなかったけれど。他の人は、そうじゃなかったかも」


作者:「XXやXXXから、XXXXていたかも」


作者:「何故、《それ》が子供を(さら)うのか」


作者:「何故、《それ》に家畜の頭が付いているのか」


作者:「何故、《それ》は特徴的な顔立ちをしているのか」


作者:「何故、《それ》は『居る』のに『居ない』ように思われるのか」


作者:「──────」


??:「どうしたの、あんた。顔色が悪いわよ?」


作者:「───限界です」


作者:「本当に、色々な事が恐ろしくて、吐きそう。もう駄目です」


作者:「───そろそろ、『締め』に入りますね」


??:「ご自由にどうぞー」


作者:「私は《それ》の種族名を、何度か口にした事があるので。いつでも殺せますよ?」


??:「ふうん」


作者:「その事を承知の上で、言いますね」


作者:「《それ》の存在なんて、忘れてしまうのが一番だと」


作者:「個人的には、そう思っています」


??:「”忘れられて消えろ”、って言うのね?私に対して」


作者:「はい、そうです。忘れられて、消えてください」


??:「・・・・・・」


作者:「”みんなで忘れて、消す”。他に良い方法が思い浮かびません」


作者:「───ごめんなさい、リグレットさん」


??:「・・・・・・ま、そんなものよね」


??:「気に食わないけど。世の中そんなものよ、ほんと」


作者:「──────」


??:「《これ》は最後の一匹。今から故郷に戻ったって、もう手遅れね」


??:「誰もに忘れられて、その嬉しさを憎みながら消滅するんでしょうよ」


??:「そして、吸血鬼のほうは。戦って戦って、挙げ句に殺されて、死ぬ」


??:「どっちにしたってもう、私の『死』は確定してるんでしょ?」


作者:「──────」


??:「・・・いいわよ。さよなら」


作者:「リグレットさん」


??:「・・・戦場へ戻る。殺せるだけ、殺して。時間稼ぎしてくるわ」



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― 新着の感想 ―
まじかよ、、、確定じゃあないけど三通りくらい思いついちゃった、、、あーあ。忘れよ
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