554話 聞いて 03
「どうした、女。他にもあるなら、僕が見てやろうか?」
「結構です」
当然、Yesなわけはなく、日本式の慎ましい『お断り』でもなく。
迷惑だから、やめてください。
ほんとに。
ここへ持って来てるのは、それほど《重要機密》ってモノでもないけど。
コードの書き方、それを統合する際の癖みたいなのを知られるのは避けたい。
敬愛するマギル講師ならともかく、この王子に信用なんて無い。
これから先も、絶対にあるわけない!
「暇だぞ、退屈だぞ。
せっかくだから、もう少し見せてみろ、女。
今迄の魔法使いよりは、かなりデキるようだしな」
・・・は?
今迄の、《魔法使い》??
「ちょっと待って、あたしの他に人間の《魔法使い》がいるの!?」
「正確には2名、『いた』だ」
「もういない・・・死んだ、ってこと!?
その理由は!?」
「1人は、老衰。
もう1人は確か、誤嚥性の肺炎だったな。
まあ肺炎といっても、僕がやったわけじゃないぞ?」
「いや・・・そういうのは置いといても!
駄目じゃん!
全然駄目じゃん!」
「どうした、女」
「《魔法使い》になるなら、というか《本当の魔法使い》になる為には。
『不死』はともかく、『不老』は絶対に押さえておかないと、意味無いでしょ」
「つくづく、人間は大変だな」
「・・・・・・」
ショックだ。
かなりの規模の、視界がぐらんぐらんするくらいの、大ダメージだ。
なにそれ。
馬鹿でも《魔法使い》になりかけるくらいは出来ちゃう、ってこと?
じゃあ、あたしの大切な『思い出の一日』の価値は?
自分で言うのは自慢たらしいが、結構難易度が高かったと思ってるんだけど?
「そう気にするな、《3人目の魔法使い》。
他の2人は『思い付かなくてよい方法』を思い付き、実行しただけだ。
それ故に、その後は運に見放されたのさ」
「??」
『思い付かなくてよい方法』?
・・・あーー、アレか。
「もしかして、どっかの独裁者?」
「その通り」
「・・・だったら、納得。頭が悪いのも当然だわ」
ちょっと、意外だったな。
自分で思ってたよりプライドの高い、自分がね。




