544話 宇宙戦士と究極爆弾 03
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「しっかし、長官が戻って来て一安心ですね!」
宙域防衛部・第一分隊長のガリィベックが、歯を剥いて笑う。
「毎日S級が現れたとしても、長官がいりゃ一発でしょ!
心強いったらありゃしない!」
「あのねぇ。心強く思ってくれるのは良いけれども。
私は《蜂》と戦わないよ?」
「むがっ??」
チキンレッグに齧り付いたまま、驚愕へと変わる表情。
「何で??」
「首都で奮戦したせいで、腰を痛めちゃってさ。
医者から言われたんだよ。
フォーク、じゃなかった、”ビールジョッキより重い物は持つな”、って」
「ええ〜〜!?嘘でしょ!?」
「いや、ホント、ホント」
嘘だけど。
毎度毎度、あんなのと戦うなんて御免こうむるね。
何の為の管理職、長官だよ。
「私の仕事は、頑張る君達を頑張って応援する事さ。
あーー、肩が痛い、肩が」
「さっき、腰だって言ってませんでしたか?」
「肩も首も痛めてるんだよ。全身ボロボロ。
《蜂の迎撃》なんて、とてもとても!」
「う〜〜ん───長官、ちょっと正直に言っていいですかね?」
「どうしたの」
「長官って、マジで『胡散臭い』っスね」
「ははは。
柔らかくて上等な椅子に座れば、立つのも億劫になるってもんだよ」
「どうですかね、そりゃ。
長官の場合、椅子が用意される前から『胡散臭かった』んじゃないですか?」
「さあねぇ。
その頃を知ってる者はみんな階級上げて、他所へ行っちゃったしねぇ」
一番最初の副官なんて、今や中将だ。
自分みたいに38秒間じゃなく、『本物の中将様』。
立ち回りの胡散臭さも、あっちの方が相当に上だぞ?
いや。
まあ、そういう過去話は、置いておくとして。
「・・・ところでさぁ、ガリィベック中尉」
「へい」
「此処に入った時から、ずっと気になってたんだけども」
「───」
「いい加減に『つっこんで』いいかな?
・・・アレ、何なんだい?」
まじまじとは見たくないモノに、仕方なく視線を合わせ。
やっぱり嫌で顔ごと目を逸しつつ、指で指し示すと。
一瞬で。
好き勝手に飲み食いしていた連中が、ぴたり、と動きを止める。
「ええと───その」
「アレは、何?」
「───見りゃ分かるでしょう、見りゃ」
半ばヤケ気味にキレつつ、しかし居心地悪そうに下を向いてしまう中尉。
宴会場の壁際。
二刀を構えた純白の石膏像。
それは。
皆に避けられながらも、こちらにしっかりと顔を向けて設置されていた。




