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543話 宇宙戦士と究極爆弾 02



「いやぁ、凄いですね、長官!」

「ニュース特番の映像で見ましたよ!英雄じゃないですか!」



すでに酔っ払っている何名かが、大声で絡んでくる。



「別にそんな、大したものじゃないさ」


「大したものですよ!」

「長官が居なきゃ、首都は壊滅してましたって!」



そうでもないだろ。

陛下御自身が出て来られた上、とんでもない『援軍』だって駆け付けたし。

ちょっとした『時間稼ぎ』くらいだよ。


大体、あんなに目立つつもりは無かったんだ。

おかしな転移陣(ゲート)に巻き込まれ、跳んだ先が首都だっただけの事。

完全な成り行きだよ。



「ま、ま、とにかくですね!」

「とりあえず長官も、飲んで、飲んで!」



強引に、シャンパングラスを押し付けられたが。



「ちょっと待って、昼間っからこれはマズいでしょ?

こういうのに五月蝿いのも、居ることだし」


「ああ、副官(あいつ)なら大丈夫です!」

「いの一番に()巻きにして、士官室に投げてきましたから!」


「・・・そうか。それならいいけれど」



まあ、『祝い事』という名目ならば、多少は羽目を外しても良いか。

シャンパンどころか、かなりキツそうなのを(あお)ってる連中もいるしな。



「それにしても、せっかく昇進したってのに」

「一体どうしてまた、降格しちまったんですか?」



やっぱりそれ、聞いてくるかぁ。



「私はね、中佐で十分なんだよ。

これくらいの事で昇進なんかさせられたら、たまらない。

そこのところを、陛下にとっくりと説明申し上げたんだけどね。

”どうしても駄目だ”って仰られてさ」



スモークサーモンとチーズのカナッペを(つま)み、シャンパンを一口。



「・・・そうこうする内に、うっかり手が滑って陛下に斬り掛かっちゃってね」


「ぶふぉッ!?」

「何やってんですか、アンタ!?」


「だから、”これをもって、《降格》にしてください”、と」



まあ攻撃は、護衛のおねーちゃんに止められたけどさ。

拳で。


結局のところ、私が中将だったのは僅か、38秒だよ。



「何でそんな馬鹿までやって、中佐に(こだわ)るんです?」

「中将と中佐じゃ、退役後の恩給が全然違うでしょうに!」


「・・・実はさ。

昔惚れてた女性が、”貴方が中佐になったら結婚してあげる”、と」


「してないじゃないですか、結婚」

「それ、普通に『お断り』の台詞ですよ」


「じゃあ、亡くなった母が”中佐より上にはなるな”、と」


「『じゃあ』って何だ、『じゃあ』って」

「絶対、嘘でしょう!」


「いやいや、ホント、ホント」



嘘だけども。


とにかく私は、中佐でいたいんだよ。


退役するまで、その理由を明かすつもりもないのさ。



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