542話 宇宙戦士と究極爆弾 01
【宇宙戦士と究極爆弾】
(・・・何だ、こりゃ)
気密室を経由して基地内部に入るや否や。
ダグマイアー・ドイ・ジェイルスは片目を細くして、短く息をついた。
───誰も居ない。
格納庫にも整備室にも、そこから内郭へと続く廊下にも。
まったく誰も居ない。
それこそ、昼寝してる猫一匹だって居やしないぞ。
職務は一体、どうなってるんだ。
放棄しているのか?
《蜂》の警戒は?
何だか分からないが、自分まで『ストライキ』に参加とはいかない。
とりあえず司令部へと歩く、ダグマイアーだったが。
辿り着いたその扉には、一枚の張り紙。
”地下二階の《体育場》までお越しください”
(・・・おいおい)
それなら、気密室を抜けてすぐの所に貼ってくれよ。
完全に無駄足だろ、これは。
会議室じゃなくて体育場なのは、全員が入れるのがそこしかないからか。
『直接に来い』と言うなら、ストの交渉ではなさそうだ。
というか───もう大体のところ、この事態を理解してしまったな。
すぐ側のエレベーターは、1Fまでしか行かない。
嫌々ながら来た道を戻って機材搬入用の大型昇降機に乗り込み、B2Fへと降下だ。
───体育場のスライドドアの前に立ち、一つ深呼吸。
───取っ手をガラリ、と左へ引き開けると。
「「「「「ダグマイアー長官!3階級昇進、おめでとう御座います!!」」」」」
予想通りクラッカーの破裂音と、一同の拍手が出迎えだ。
「あーー、まあ、うん」
「「「「「そして!!3階級降格、おめでとう御座いまああすッ!!!」」」」」
吊り下げられた横断幕から、《中将》の将の字がポロリ、と剥がれ落ち。
一層大きな拍手が響き渡る。
くす玉が割れて舞い踊る紙吹雪に、猫達も華麗なジャンプで応戦する。
「・・・それは別に、祝わなくていいんだけどね」
嫌がらせのようにぴったりと自分の頭上で炸裂したそれの、ほぼ直撃を喰らい。
襟元から中へと入り込んだ紙片に辟易しつつ、彼はぼやいた。




