表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
532/743

530話 知らない騎士団と疑惑 01


【知らない騎士団と疑惑】



人は生まれて、成長し。

社会へ出て『困難』を、『脅威』を知る。


そうなるであろう予兆は、学生時代において十分すぎるほどある。


進級する為、卒業する為、進学する為には《単位》が必要。

それを握り締めている悪役は、『教師』だ。


彼等と、どう上手く付き合うか。

どうやって黙らせるか。

手段は様々だが、目的は一つ───《単位》の取得。

真面目にやることも、裏をかくことも、ちゃんと意味がある。

将来に待ち構える『困難』への予習、模擬戦闘だと言えるだろう。



そして、それらを乗り越えて、ようやく一人前の社会人となったなら。

行く手に立ち塞がるのは、『上司』という奴だ。


『上司』は、『教師』以上に強大な力を持っている。

具体的には、給料に直結する評価だ。


敵に回せば即、支給額に響き。

少なくなれば、食事に困る。

税金が支払えず、督促が来る。

スマホが、ただのガラス板に成り果てる。


生活の(すべ)を丸ごと、人質に取られているようなものだ。


それを理解しているからこそ、『上司』はド汚い。

自分の立場を守る為なら、部下に何でも押し付ける。


幼少期から周囲の人間が『嫌な奴』ばかりだった、僕だが。


その僕をしても『上司』というものは、とても厄介だ。

向こうは文字通り、生殺与奪の権を握っている。

隙あらばタダで、もしくは安価にコキ使おうと企んでいる。


Fuxk!

鳥のフンでも浴びろ!



───少し痩せたみたいだ、とかシンは言ってたけど。


───目の前の『豚』は相変わらず、『御立派な豚』にしか見えやしない。



「ダイエットしたらどうです?」


「挨拶より先に、それかね?」



尊敬してやまない上司様が、見事にアヤシイ笑顔を返してきた。


豪速のデッドボールも、脂肪の分厚さで(はじ)くか。

肉肉しいな、こいつ。

肉肉しい。


くたばれ!



「マーカス君。

今日(こんにち)までに及ぶ君の、特務員としての実績はね。

非常に───そう、非常に高く評価されているのだよ」


「我等の救いたる、大いなる主に?」


「いや、私に」


「礼を言うべきかもしれませんが、一旦『保留』にしときますね」


「そうかね」



ゴングが鳴って、ラウンド開始直後。

互いがジャブで牽制しあう。



「これは、正直に答えなくても構わないんだけども。

君には、《野心》があるかね?」


「どういう《野心》です?」


「例えば、何らかの組織体系において上位に位置したい、というような」


「特に無いですね。

あったら、そのデカい椅子に座ろうとして、暴れてる最中だと思いますけど」


「ふむ」


「ただ、《野心》は無くとも。人並みの《希望》はありますが」


「どんな《希望》かな?」


「賞与とか」


「人並みに?」


「人並みの、『人並み以上に貰いたい』という《希望》です」


「ほほう」


「ほほう、とか()き声じゃなく、人間の言葉で話してもらえません?」


「善処しよう」



もつれ合いからの離れ(ぎわ)に繰り出した、僕の右フック。

豚のくせに、華麗なスウェーで(かわ)しやがった。


クソ太々(ふてぶて)しい奴め!



「・・・それで、本題は?」


「今回の任務は、少々特殊なのだが」


「いつだって、そうでしょう」


「いつにも増して、だよ。君にしか任せられない仕事だ」


「いつも、そう言ってますよ」


「だから、いつにも増して、だよ」


「・・・・・・」


「マーカス君」


「何です?」


「今回の任務はね。

必ず、失敗してもらいたい」



・・・おおっと。


これは確かに、斬新なパターンだぞ。


つまり。

これまでになかったような『新しい嫌がらせ』ってコトか!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
失敗しなければならない任務てことは、実質的な成功を表向きには失敗としなければいけないということかな?すると誰かから押し付けられた任務か、はたまた例の「全種族に開かれた教会」に関係があるか、、、 楽しみ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ