528話 損は無し 03
「どういうアイデアだよ」
「わたしのところに、ぜんぶ任せればいい」
「全部って、おい。
連合で分担してたんだろ?それを、全部か??」
「そう。
ぜんぶ、カルロゥに丸投げするから、だいじょうぶ」
「しかし、それは」
「へいき。とても喜ぶ」
「──────」
果たして、そんな事が可能なのか?
件の『カルロゥ君』、押し潰されて倒れるんじゃないのか?
いや、待てよ。
あの《勇者》たる報道屋の、兄だというなら。
もしかして、いけるのか?
弟がアレなように、兄もアレで。
気絶するような仕事量を抱えて、その上でニンマリ笑い。
”チョー気持ちイイッ!!”、とか言ってしまう奴なのか?
「───本当に、いいんだな?」
「もちろん」
「任せるぞ?
俺は何があろうと、余計には働かないからな?」
「わたしもぜったい、はたらかない」
互いの覚悟を込めた視線が、固くぶつかり合って。
「───よし。それでいこう」
「うん」
実質的な損害、ゼロ。
今日もミュンヘンは。
気持ちよく晴れ渡り、素晴らしい天気である。
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「いやあー、凄いっすね、ミスター・アルヴァレスト!」
休憩室に備え付けられたTV。
映っているのは第11CHの『ELH』こと、『エブリデイ・ライク・ヘル放送』。
「大人気だし、移住希望者が激増してるって聞きましたよ!」
「そうだな。仕事が『超大盛り』で押し寄せて来るだろうよ」
「え?」
「まあ、『俺の分』の話だ。お前らは心配しなくていい。
これまで通り、真面目にやってりゃいいんだ」
「そうっすか?
ああ、この《大演説シーン》撮ったのって、カルロゥさんの弟ですよね!?」
「まあな」
「今年の《報道大賞》、間違い無しでしょ、これ!」
「どうだろうな。
それよりも、《放送倫理会》の審議に何件か引っ掛かってるらしいが」
「・・・うわぁ」
「───いいか、ジルモーク。
こういう派手なのを、羨ましく思う必要は無い」
「羨ましくは、ないですけど」
「質素で、単純に量だけが多い仕事でも。
それを自らアホほど背負い込めば、修羅場となる。
ごく自然に、命懸けのデンジャラスな環境を作り出せる」
「いや、そんなの御免こうむりますけど」
「お前らじゃなくて、『俺』の話だ。
───さて、そろそろ戻ろう。
仕事が待ってるからな、わんさかと」
「・・・あ、ハイ」




