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51話 The Hero in summer 03



 I--tali--a!! (ダン!!ダン!!)


 I--tali--a!! (ダン!!ダン!!)



 大観衆の声援と。

 砂浜を踏みしめる、足音のリズム。




 ・・・俺はもう、駄目らしい。


 身体に力が入らない。

 膝が笑ってる。


 ああ。

 もう、立っているのが精一杯なんだが。


 ぼやけた視界の外側から、何か聞こえる。




 ───俺には関係ない、何かが。


 ───まったく有り難くない、何かのメロディーが。




 Fratteli d'Italia l'Italia s'e' desta,


 Dell'elmo di Scipio, s'e' cinta la testa.


 Dov'e la Vittoria?


 Le porga la chioma




「・・・マギル・・・ヤバい。

 幻聴が・・・イタリア国歌が・・・」


「幻聴ではありません。

 ふっ・・・ボスにとっては、テーマソングのようなものですね」


「・・・ちがう・・・」


「メキメキと、都合良く力が沸いてきませんか?

 追い詰められた主人公が隠し持つ、後付け設定的な必殺技とか」


「ねぇよ・・・むしろ俺のドラゴニックなパワーは、暴落中だよ」


「ふふっ・・・それは、困りましたね」


「・・・お前、さっきから笑ってないか?」


「いいえ」


「・・・・・・」


「しかし、このままですとボスのファンが悲しむでしょうね」


「・・・あ?・・・何だ、ファンって」


「どうやら、元祖・イタリア由来の悪魔達も、人間に混じって観戦してるようです。

 ボスは、『名誉イタリア悪魔』として5年前に認定されていますので」


「そんなもん、知るかよ・・・」


「ちなみに、現在の『イタリア悪魔会』のメンバーは、女性のみのようですね」



「・・・ちょっと・・・本気でレシーブするから、頼む・・・」


「了解」






 それは。

 奇跡ではなかったかも、しれない。


 小さな、小さな意地と、見栄と。

 ビーチを埋め尽くした観客の、希望。


 渇望。



 けれど、それは紛れも無く、現実だった。




 大魔王の放つ一撃を。


 満身創痍の勇者が受け止め、両手で跳ね上げた。


 それは理想的な放物線を描いて、ネット(ぎわ)にふわり、と浮かび。




 ───逆光の中、秘書の速攻(クイック)が、叩き込まれた───







 膝まで砂の中に埋もれた勇者。


 彼はもう、動かなかった。




 闇の中に堕ちゆく意識に、歌だけが響いていた───




真夏の勇者───退場っ!!

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