515話 It's time to pay 05
『人間形態』や禁断の『ミニドラゴン』になり、サイズダウンして逃げる?
それも魔力回路が麻痺してるから、無理だ。
───しかし、諦めるな俺!!
名称不明のビームを照射される瞬間、微妙に動いて急所を外す作戦!
これしかないだろ!
ドンピシャのタイミングで首を捻り、頭部だけは攻撃範囲から外す!
他の部分は綺麗サッパリ、消し飛ぶかもしれないが!
哀れ、『首だけドラゴン』になろうとも!
俺は、1パーセントの生存確率に賭けてみせるぞ!!
さあ、来いよ!
撃ってこい!
命懸けの一発勝負だ!!
───・・・・・・いや、お前。
───撃てよ、早く。
何で焦らしてんだよ?
それはちょっと、卑怯ってモンじゃねぇか?
こういうプレッシャーの掛け方は良くない!!
後生だから、カウントダウンくらいしてくれよ!!
おいッ!?
心臓バクバクで、ダラダラ汗をかく俺の眼前。
巨体の《蜂》が、真っ二つに分かれて転がった。
「・・・は??」
嬉しそうに肋骨を砕いてやがったS級も、同じだ。
左右均等に切り分けられ、瞬く内に砂の如くザラザラと崩れてゆく。
いや───何だってんだ、一体??
その時。
きらり、と空が光ったような気がして。
力を振り絞って重い首の筋肉を動かし、頭を持ち上げると同時。
ゴスッッ!!
「ぐがッ!!」
物凄く硬い何かが、頭頂部を直撃した。
いっっでええっ!!!
激しく脳が揺らされて、視界に点滅する星々。
やっぱり俺、死ぬのか・・・。
意識が遠のきかけるが、すんでのところで踏み止まれたのは。
かろうじてまだ機能している聴覚が、『知っている声』を捉えたせいだ。
「───見たことない顔だけど。あんた、誰?」
げえっ!
姉貴!?
「───初めてお会いするけれど、どちら様かしら?」
ひいっ!
レンダリア様!?
「うちの可愛い弟に、何の用?」
「私の愛しいヴァレストに、どういった御要件?」
(・・・・・・)
あの。
その。
俺が今、叱られた仔犬のように目を伏せ項垂れている理由は、2つだ。
まず第一に。
ドラゴンの眼球は、顔の横に付いていて。
視界範囲はギリギリ、自分の頭頂部までカバーしているのだが。
女性を『下から見上げる』のは、非常によろしくない。
アウト中のアウト。
そして、第二に。
会話の流れが、とてもおっかない。
物凄くヤバい。
つまり───そういう事だ。
これ以上の説明は不要だろう。
「強いのとカチ合ったら、必ず戦ることにしてんのよね。
それが『こいつ』に関することなら尚更、見過ごせないし」
姉貴!
その気持ちは有り難いが!
多分、剣の先っぽが鱗に触れてる!
熱い!!
ハゲる!!
「《恐怖の世界》に生まれ、今も私の存在意義は続いているわ。
ヴァレストを脅かすものを全て排除するのが、愛情の証明よ」
レンダリア様!
愛が三周くらい回った挙げ句、振り切れてる!
あと、そこグリグリ踏まないで!
穴が空く!!
ハゲる!!
「ふうん、相当自信がありそうだけど。
あたしは、負けた事も無いような奴に負けるつもりはないから」
「勝敗を認識する暇なんて、与えない。
出来るだけ優しく『消す』けれど、それでも痛かったら御免なさいね」
いやいや!
コレ限界!
話が具体的になりすぎてるっ!!
「じゃあ、さくっとやっちゃおうか」
「ええ、きっちりと片付けようかしら」
「駄目だッ!!
姉貴、レンダリア様!!喧嘩は無しッ!!」
「何でよ?」
「どうして?」
渾身の仲裁に対して、返ってきたのは明らかな不満だ。
嫌な予感がする。
なんか矛先が俺に変更され、袋叩きにされそうな感じ。
こういうのは俺、よく分かるんだよ。
《強さ》ってのは極まれば、ただ意識を向けるだけで《暴力》になるんだよ。
「姉貴とレンダリア様は、どっちも大切だ!!
戦うの禁止!!仲良く、楽しく!!
頼むから!!
本当、俺の一生のお願いだから!!
これ以上言い争ったらもう、泣き喚くぞ!?
ハゲるぞ!?」
俺は、『叱られた仔犬』から『駄々をこねる子供』にクラスチェンジした。
勿論、何の能力がどう向上したわけでもない。
情けなさは、これっぽっちも変わらないままだが。
「ヴァレスト───あんたってば───」
「ヴァレスト───貴方は、もう───」
頭の上で、溜息が2つ。
・・・よしッ!
流れが変わったか!?
「男がピーピー騒ぐな!デカい体して、まったく!」
「怖かったのね?よしよし、泣かないでいいのよ?」
体内に、力の流入を感じた。
回路の麻痺が解けて、失った魔力がみるみる内に補填されてゆく。
「あ・・・ありが」
おい、ちょっと待って!
そんな!
自転車のタイヤに、超高性能コンプレッサー2台で注ぎまくったら!!
「お、オッケー!!
大丈夫、もう大丈夫!!
大丈夫じゃないくらい、大丈夫だから!!」
「そお?」
「そうなの?」
とっくに満タンだよ!!
鼻や耳から吹き出しそうだよ!!
俺のこと、爆散させたいのかッ!?
「あんた弱いんだから、気を付けて戦うんだよ?」
「無理せず、あとは任せておきなさいな」
姉貴とレンダリア様が、非常に保護者的な台詞を残し。
ばしゅんっ、と頭の上から飛び去った。
傷付いたプライドを、自分で慰める間も無く。
再度、その衝撃に脳を揺らされて呻く俺。
西と東、それぞれに『何か』が着弾するのが見えた。
というか、大爆発して火柱が。
ああ。
現在、誇張無しで『首都炎上中』だ。
被害者は《蜂》だけ、と信じたい───




