514話 It's time to pay 04
とにかく、不自然に密集した《蜂共》を頼りに、地下避難所を探す。
どの入り口も、あわやこじ開けられる直前。
防衛している評議会職員も、絶命寸前という有様。
それでも、6箇所全て、間に合った。
全部にガッチリ、拠点防御系の魔法を掛けまくった。
───6箇所だよな?
───他には、もうないよな??
尚も追加の《蜂》が続々と侵入してくる、奇怪な『渦』。
その近くで、おっそろしく強ぇ《双剣使い》が暴れている。
とんでもない速度で斬りまくり、突き刺しまくって《蜂》を食い止めている。
んん、誰だ?
見たことないぞ?
『位階持ち』の上位者なんだろうが、あんな奴いたか??
いや、それにしたって、増え続ける《蜂》の半数以上はどうにもならないが。
しかし。
ここへきて、味方の増援が到着し始めた。
地獄の別都市。
もしくは地上界からの、参戦者だろう。
俺と同じく、《転移申請》無視のカッコいい奴等だ。
いいぞ、もっとやれ!
『罰則金』、みんなで払えば怖くない、ってな!
絶対、割引にゃならないだろうけども!
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少しずつマシな感じになってきたが、まだ戦力が足りない。
必死の抗戦が、反撃にまでは至らない。
最優先でS級を倒して脅威を減らしたい、とは思うが。
放っておくとB級共が、蜂の巣に似た『共同生息地』を作り出す。
それを多数のA級で、守護しやがる。
こいつら、どういう理屈で自分達の行動を決定してるんだ?
《蜂》ってんなら、一番偉いのは女王蜂だよな?
だが、S級より偉そうで厄介そうなのは、複数いるぞ?
あんな俺よりデカいのなんて、学校の授業じゃ習わなかったよな?
多分。
───何にせよ、全体を統率している奴が、この場の何処かに居る。
───そいつを潰せば、こいつらの動きは崩せるはず。
よし。
駄目元でいいから、試してみるか。
この俺の、『まともなほうな』字名。
『教典破壊者』の所以、ご披露してやるぜ。
死なない程度に踏み付けたA級の、頭部らしき場所。
その奥の、更に奥の。
『意識のような何か』に、俺の《固有能力》を接続する。
《オ前ノ 大切ナモノハ 何ダ》
《オ前ガ 従ウベキモノハ 何ダ》
───判別出来ない、色彩の海。
───理解不能な言語や、意味不明な本能を飛び越えた向こう側。
───『それ』が、見えた。
───え???
人間??
何故、ここで人間が出て来る??
しかも。
初めて見るが、初めてではないような。
つい最近、よく似た誰かに会ったような。
あ・・・あれ??
今、確かに何か、記憶の欠片に触れたのに。
みるみる、それが小さくなって掠れてゆく。
どういう事だ!
何でだよっ!!
《双剣使い》はともかく、陛下の護衛といい、この人間といい!!
俺ともあろう者が、女性に関して『分からない』とは、情けない!!
───ノイズ混じりの映像の中、やや伏せていた女性の顔が持ち上がり。
───互いの視線がぶつかって。
”あら、これは面白いけれど・・・残念だったわね”
「え」
” 『却下』”
「!?」
強制切断というより、もっと暴力的に接続自体を弾き飛ばされる。
しかも。
今の一瞬で、何をやられた??
体の内側から、青褪めるくらいにゴッソリと魔力が失われている。
おまけに魔力回路が麻痺して、ほぼ停止状態。
駄目だ。
まともに動くことも出来ない!
「───ぐはッ!!」
横合いからS級の、鋏のような硬質外骨格が突き立てられた。
おいお前、《蜂》だろうが!
何でそんな、クワガタ虫みたいな!
肋骨ごと胸殻を押し潰しにくる痛みを堪え、身をよじったが。
俺の真正面。
いつの間にか、Sより巨大でヤバいのがいた。
ぐぱり、と金属質の『顎』が開き。
粘液にまみれた喉奥から、砲身を思わせるモノがせり出して来て。
おいおいおい!!
待て待て待て!!
その、ヒュイーーンとか鳴ってるヤツ!!
次第に赤い輝きを増している、ソレ!!
絶対、滅茶苦茶ヤバい『何か』を放出するつもりだろ!?
大口径のレーザービームとか、そういう類のか!?
くそっ!!
これは間違い無く、喰らったら駄目な攻撃だ!!
命には替えられない!!
ここはもう、限界点解除を!!
───ああああッ!!
───魔力回路が回ってないから、解除出来ねぇしッ!!
いかんッ!!
クワガタ野郎のせいで竜息どころか、溜息も吐けねぇッ!!!




