512話 It's time to pay 02
被害は、深刻だ。
数え切れない程の《蜂》が蠢き、建築物の殆どが倒壊。
脳内の輝かしい首都のイメージとは、正反対の現状。
外観的な意味ではすでに、『壊滅レベル』まで達している。
───だが、これで『終わり』ではない。
───俺達にはまだ、『希望』がある!
うちの連中が東側の地区に降下するのを、横目で確認し。
元々別行動する予定だった俺は、真っ直ぐ中央部へと降りてゆく。
そこには。
我等が《祖》にして《王》たる、至高の存在。
魔王陛下の戦う姿があった。
宝杖ヴィエムディルターを手に、奮戦しておられるが───
どう見ても、明らかに本調子ではない。
やはり、療養の途中で無理に出てこられたのだろう。
いや、それどころか。
「陛下!!」
横から向かって来たA級を、前脚で振り払い。
もう一匹を踏み砕いて叫ぶ。
「アルヴァレストかッ!」
「陛下───その『傷』は!?」
「大した事はない、私に構うな!
お前はそれよりも、シェルターを頼むッ!」
「───はッ!!」
確かに、助太刀が必要なのかといえば、そうではない。
陛下の背後には、護衛らしき者がいる。
見た事の無い女性だが、えらく強い。
殴って、殴って、殴りまくって奮戦している。
S級すら一発で仕留めるような腕前だ。
どうして素手の攻撃なのかは、大いに謎だが。
まあ、ここは陛下と彼女に任せて、俺は別方面で戦うべきだろう。
ただ、陛下の『傷』に関しては気に掛かる。
───左脚から腰までが、白い結晶に変わっておられた。
───しかも、それが現在も尚、進行中。
アレは間違い無く、《塩化》だ。
悪魔が、聖属性の攻撃によって著しいダメージを受けた際の反応。
しかし、陛下はただの悪魔に非ず。
地獄における頂点、力と叡智を体現する唯一無二の存在だ。
一般的な悪魔がベッドサイドのランプなら、陛下は正に太陽そのもの。
ちょっとやそっとで怪我するような御方じゃあない。
仮にあの忌々しいイスランデルが、『神器』を振り回して攻撃したとしても。
そんなのは、すぐに再生するだけだ。
《塩化》になど至らない。
だったら。
この『天使がいない状況』で、陛下を《塩化》させ続けているのは、誰だ??
いや、それを考えている場合じゃないな。
シェルター・・・避難している市民を守らなければ!




