表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
500/743

498話 甘くない『おやつ』 04



頭痛と吐き気に悩まされながらも、周回を続ける。



このゲーム、お蔵入りして当然だよ。

6歳の子にこんなのやらせたら、人間不信どころじゃ済まないだろ。

作ってる途中でヤバいと気付けよ、マギル!



───とはいっても、俺からすればもう、『乗りかかった船』。


執念と執念、おまけにもう一丁執念で、やり切るしかない。

《真エンド》を見ずに、このまま投げ出したくない。

そのほうが、俺の心に深い傷跡を残しちまう。



多分、マギルがわざとそうしてるんだろうけども。

このゲーム。

会話シーンのスキップとかメッセージの早送りが、搭載されていない。


何でだよ。

今ドキの仕様じゃないだろ、こんなの。

プレイヤーの精神鍛錬でも狙ってんのか?

そういう所も含めてもう少し、いやかなり手加減しろっての!



───最早、とっくに何周目か忘れてしまった頃。


───段々と、とあるキャラクターの動きが目立つようになってきた。



マリナという名の女性。

『操練士』と呼ばれる職業の、かなり地味な存在・・・だった筈。


戦闘パートにおいて、『操練士』の力は微妙だ。

方角や地形特性を活かしたり、変化させたりで各員の能力を上げるのだが。

その上昇分が、どうにも少ない。

正直、意味無いんじゃないか、くらいの感じなのだ。



そこに加えてもう一つ、これまでマリナが目立たなかった理由。



───彼女は毎回、中盤に差し掛かる頃に、居なくなる。


───いつの間にか生死不明の、行方不明となってしまうのだ。



マリナが何を考え、どう動いているのかが次第に明かされてゆく。


彼女は同郷で、幼い頃から主人公に好意を抱いており。

彼を亡き者にせんと企む者達を(いさ)め、妨害していた。


そして。


その彼女がいつも居なくなる理由は、『殺害』。

邪魔される事に腹を立てた連中が、彼女を遠くへ連れ出し、殺していた。


しかも、その死体は焼いて砕かれ、川に流される。


主人公による『生き返し』を封じる為。

死体が無ければ蘇生できない事を、彼等が『知っている』故に。


そうやっておいて、彼等は平然と言うのだ。



「あいつ、前から様子がおかしかったからな」

「どうやら、帝国軍と通じていたみたいね」

「投降したんだろ。臆病者め」



───マリナ!


マリナこそが、ヒロインだったのだ。

見せかけの『彼女役』なんかより、心優しく。

純粋な。


主人公には彼女がいて、好意を伝える事が出来なくとも。

懸命に彼を助けようとしている、本当のヒロインだったのだ。



───待ってろよ、マリナちゃん!


───絶対に、君だけは助けてみせるからな!



ここへ至って俺は、ようやくクリアすること以外の目的を見つけ。

落ちる所まで落ちていたやる気に、猛然と火が付いた。



彼女の存在を常に意識し、プレイを心掛ける。

彼女の行動にリンクするよう、こちらの動きを合わせ。

彼女を消し去ろうとする輩の、機先を制して立ち回る。

何を、誰を犠牲にしようとも、彼女の生存優先。


だるくなって自動戦闘のオプションに頼っていた『雑魚(ザコ)戦』だが。

解除して手動で戦い、僅かにでも資金を稼ぐ。

その分で、彼女の装備のグレードを上げる。

道具類も潤沢に所持させる。

当然だが、LV自体もしっかりとアップ。


やれる事を、やれるだけやる。

内部で何かの数値が判定され、それが彼女の生存に関わるかもしれない。

戦闘だけでなく、イベントシーンの発生や結果に影響する可能性があるのだ。


俺は、本気も本気でプレイした。


そのお陰で、幾つもの隠しアイテム、隠しダンジョンを発見。

隅から隅まで攻略した。

新たな戦利品を用いて合成し、更なる装備品を生み出した。



───ところが、だ。



マリナが退場することなく終盤まで突入しても。

突如発生したイベントにより、呆気なく彼女は死亡する。


すかさず蘇生しても、またイベント発生。


死ぬ。

蘇生する。

死ぬ。

蘇生する。


もうメチャクチャだ。


《何があろうと、彼女を葬り去ってやる》


誰かがそう願っているかのように、不自然な。

不可解で不条理な出来事が、次々と襲い掛かる。


何度やり直し、どう立ち回っても回避できない。

たちまち『生き返し』を3度使ってしまう。



そして、最後。

文字通り命を懸けた、4度目の蘇生。



───流れるエンディングの中。


───結局その後、マリナは何者かに殺されたと明らかに。



つまり彼女は。


助けようとしても、『5回死んでしまう』のだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ここまでは、物語の流れに沿った自然なイベント(この様をみてるとそうは言いたくないんだが)しか起きなかったのにマリナが5回も連続で死ぬのは不自然だな、、、このイベント、マリナを生かそうとするな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ