496話 甘くない『おやつ』 02
エンディング最後の絵がフェードアウトし、スタート画面へと戻った時。
すぐに変化に気付いた。
タイトルロゴが、大きく歪んでいる。
そして、《雑音の岸辺にて》の下に追加された言葉。
『〜生き返さない、理由がある』、という小さな文字。
二周目プレイ開始。
少年時代の回想シーンが終わり、レジスタンスの活動が始まって。
まだ最初の戦闘も始まらぬ内に、『異変』が起こった。
仲間達と談笑しているが、一周目とはその内容が微妙に異なる。
いや。
それ自体は周回プレイの醍醐味であり、そうでなくてはならないのだが。
彼等が時折、ぽつりと言うのだ。
「お前がいて良かったよ」
「死んでも、生き返らせてもらえるからさ」
その台詞の時だけ、焦点の合わない濁った瞳をして。
にたり、と笑って。
───え?
───何でお前ら、主人公の能力を知ってるんだ?
疑問を感じると同時。
俺の背中に、怖気が走った。
おい、待てよ。
それはヤバ過ぎるだろ。
相手を変え、全員と会話してみたが。
誰も彼もが、知っている。
悪魔アンバイエルから渡された力の詳細、その制限すら把握していて。
「4度目だったとしても、助けてくれるよな?」、と確認までされる始末。
この『異変』が何を引き起こすかは、容易に想像出来た。
そして、すぐさま想像通りとなった。
『親友を生き返らせなかった』主人公に、親友の妹が言う。
「どうして兄さんを助けてくれなかったの!?」
「同じ村で育った、一番の仲良しだったのに!!」
凄まじい剣幕、形相。
理由を聞かせて、と詰め寄られる主人公。
けれども。
理由は───無いのだ。
『今回は親友以外を助ける事にした』。
そう決めただけだ。
しかし、それを相手には伝えられない。
そんな選択肢が、画面上に出てくる筈もないのだ。
仮に出てきたとしても。
ゲームを進めるプレイヤーの事情など、登場人物に理解出来る訳がない。
尚も責め立ててくる少女を避けながら、拠点のマップ上を移動する。
デフォルメされたキャラクター同士が擦れ違わぬよう、逃げて逃げて。
そんな主人公を、他の仲間が慰める。
「仕方ないさ。気にするなよ」
そして、例の『濁った瞳』で続けるのだ。
「でも、オレは生き返らせてくれるよな?」
「まだ4回、あるんだろ?」
───俺は、恐怖に震えた。
可能な限り急いで物語を進め、矢継ぎ早に生き返らせる仲間を選択し。
4度目の蘇生で自分も死んで、逃げるように二周目を終わらせたのだが。
───その行動が間違いだったと気付いたのは、三周目に入ってからである。




