494話 夏の宴、革命 10
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よし。
これでほぼ、仕上がった。
バッチリと精霊のお墨付きを頂いて。
ヴァースやサビ等、各パートの練習も終わった。
「・・・そんじゃ、そろそろ『通し』でいってみるかねー」
「「「はい!!」」」
元気な返答を受け取り、切り株から立ち上がる。
俺は、プロの『メタル屋』。
本気で演る時はアコースティックなバラード以外、座ってはならない宿命だ。
ギターを構えて、舞台に立つ自分をイメージ。
脳内でドラムス担当のルッセが、スティックを打ち合わせる音。
2、3、4。
ガガガガッ、ガガガ、ガガガガッ、ガガガ
ガガガガッ、ガガガ、ガガガガッ、ガガガ───
”朝日が昇りー、背を伸ばすー”
”大世万覚 三欲業生!” (デスヴォ)
”荒ぶる心ー、持て余しー”
”骸蹴炎尽 命惜雷貫!” (デスヴォ)
”歯向かう者をー、許すまじー”
”泥蒙洪流 岩落圧潰!” (デスヴォ)
”森の優しき、守り手がー”
”Kill! Kill! Kill Them All!” (デスヴォ)
”食べて寝るっ!”
”あ"い"ッ!!”
”飲んで寝るっ!”
”あ"い"ッ!!”
”暇があったら、パトロール!”
”お"う"ッ!!”
”風と大地の、精霊よー”
”炎と水の、精霊よー”
”自然の摂理に背くならー”
”慈愛の鉄槌、今ここに!!”
”アイアイアイアイ、愛してるーー♪”
”ア"イ"ア"イ"ア"イ"アイ"ッ!!ア"イ"ア"イ"ア"イ"ア"イ"ッ!!” (デスヴォ)
”アイアイアイアイ、愛してるーー♪”
”ア"イ"ア"イ"ア"イ"アイ"ッ!!ア"イ"ア"イ"ア"イ"ア"イ"ッ!!” (デスヴォ)
うおっ。
こりゃイケてるわ!
男連中の一部には、まだ少し『照れ』があるものの。
意外や意外、お姉ちゃん達の凄いこと!
横一列に肩を組んで、前のめり。
ごっついグロウルかましながら、髪を振りたくって揺れてるぞ!
お前ら、最高だぜ!
でかいハコでも『最前列』級のインパクトだ!
まさに、真の《鋼鉄戦士》!
なんならもう、どっかのフェスにでも遠征してきやがれ!
”笑顔溢れる、仲間達ィ”
”絆結びし『戦友』とォ”
”『地上の星』にィ、栄光を!”
”あ"い"ッ!!”
「このまま、2番!!」
へへ!
俺も熱くなってきたぜ!
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ふうぅーーっ。
いい仕事をしたな。
流石、ミュンヘンNo1ギタリストの俺だよ。
てなわけで───『新生《呪歌》 -Enhanced Edition-』が完成。
精霊達にも大好評さ。
これまで通り、法術を消し去るとか、肉体の強化とかを約束してくれた。
ついでに一つ、ボーナスもあるらしい。
腕の振り上げや、脚運びの変化?
そういうので、唄ってる間にも詠唱無しで精霊術が使えるんだとか。
偉いエルフが、メチャクチャ喜んでたなぁ。
ああ、あとはあれだ。
天使のおっさん。
よっぽど新曲の歌詞が気に入ったみたいでさ。
お姉ちゃんの一人と手を繋いで、はしゃいでたぞ。
いやぁ、『ラヴ』だねぇ。
これぞ夏!、って感じだよ。
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(以下、補足)
↓
作者から、世界各地のエルフの皆様へ。
これはあくまで、オーストラリアにおける一例です。
お住まいの地域によって精霊の好みは異なり、安易な模倣は大変危険です。
当方では《呪歌》によって生じた損害に、一切の責任が持てません。
また、《呪歌》の作製依頼は作者ではなく、《森の戦友支援会》へどうぞ。




