493話 夏の宴、革命 09
さて、と。
準備はしたが、ここは森のド真ん中だ。
電源が無い。
コンセントを挿すべき所が存在しない。
エルフってのは、かなりエコな種族らしい。
スマホは、一家に一台限定。
充電は水車か、手回しの発電機を使うそうだ。
よって、ギターアンプに流すのは電流じゃなく、俺自身の《魔力》。
悪魔ギタリストたるギルバート・サイクスの実力が試されるのは、まさに今!
「とりあえず、イメージとしては・・・」
ガッガッ、ガガッ、ガッガッ、ガガッ───
「そっ、それは激し過ぎではっ」
刻んだリフにすかさず、お偉いさんの抗議。
「そうでもないだろ・・・もちっと、アゲるかね」
ガガガガッ、ガガガ、ガガガガッ、ガガガ───
「きょっ、凶悪っ!!??」
「ピアスの兄ちゃんさ、精霊の反応はどんな感じよ?」
「あ、ハイ!
”かなり期待が持てる”、”やっと時代に追いついた”、とか言ってます!」
「ふむふむ」
「あとは、ええと!
”間奏部分でシャッフル、変拍子からのゴアスラッシュを希望”、って!」
「おっと!そりゃあ中々、言ってくれるねーー!」
俺は、プロだ。
プロの『メタル屋』だ。
世間一般じゃ、ロックがハードロックになり、もっと激しくなったのがメタル。
そういう認識らしい。
小煩い奴は、メタルじゃなくヘヴィーメタルと呼べ、とか騒ぐし。
起源も諸説あって、語ろうとすると結構面倒臭いジャンルなんだよな。
『ブルースからの脱却』だとか。
『パンクのカウンターカルチャー』だとか。
ジャズから派生した、とかいうのもあったっけな。
あれは流石に、”違うだろ”と思う。
食い詰めたベーシストやドラマーが、ジャズ畑から流れてきたってだけの話。
そういうのはほぼヘロイン中毒者だから、すぐにおっ死んだらしいけど。
まあ、難しいことはいいんだよ。
俺の主張は、ただ一つ。
《いいから、楽しめ!》。
「作り直しとは言ってもさ、『原曲』の4割は残す方向でいくからな?
リスペクトの精神だ。
サビのメロは可能な限り、オリジナル路線。
その分、他は攻めたアレンジで」
「はい!」
「《曲先》でも《詩先》でも、出来上がりに時間が掛かる。
敢えて、同時制作でいこう。
調整は曲のほうでやるから、心配すんな。
俺が作ってる間、兄ちゃんは作詞の統括を任せるぜ。
キーワードとか出し合って、少しずつ組み立てていってくれ。
元の歌詞も、残すべきところはちゃんと残せよ?
そうだ、あと一つ。
当時『原曲』の作成に関わった奴は今回、口を挟むの禁止で」
「了解!」
「うぐっ───」
偉いエルフが呻いた。
やっぱり、アンタかい。
その見た目で5000歳以上とか、ファンタジーも甚だしいな。
「ここは若いパワーが必要な局面だぜ?
派手にやろう。
年長者は、見守り役。
新世代の感性に触れて、良い部分は認めてやらなきゃさ?」
「───はあ、まったく。
仕方ない───承知した」
「あ、作詞チーム、こっち来い。
もっと近くに寄ってくれ」
同時進行でやるなら、互いに何をしてるか把握出来るほうがいい。
俺の出してる音を、向こうが聴いて。
連中の発案、作成状況を俺が踏まえて。
そうやって、最終調整に掛かる時間を短縮する狙いだ。
こうやって、ワイワイと何かを作るのは楽しいもんだよ。
俺もエルフってのを『現実』として理解する、いい機会だ。
ゲームや映画よりも断然、面白そうな奴等だし。
はは。
いいねぇ、やる気出してるじゃん、みんな。
んお?
凄いのブチ込んできやがった!
何だよ、日本語のラップ?
てゆーか、呪い?
いやあ、大したセンスだ!
体を動かしてる奴もいるぞ。
振り付けもアリってか、これ?
ハイスクールでやった創作ダンスの授業より盛り上がってんなぁ、おい!




