492話 夏の宴、革命 08
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ギター1本、どこでも参上!
・・・って、そうはいかないのが、『現実』なんだけども。
経緯や詳細はバッサリ省くが、今回は緊急事態らしく。
”あーだこーだ”と文句を言ってる暇が無かった。
個人練習用の小型アンプと最低限のエフェクターを纏め、急いで支度。
兄貴の出してくれた転移陣で、ひとっ飛び!
海外旅行の実感なんて少しも湧かないまま、『オーストラリア入り』だ。
「・・・オーケー。大体の感じは、分かったぜ」
一番偉いっぽいエルフから渡されたBT接続のイヤホンで、その曲を聴き終え。
リピートが掛かる直前にワンタップして、『停止』。
へええぇ。
このイヤホン、結構音質が良いな。
BTナメてたよ。
サウンドチェックに使えるとまでは言わないが、普段使いなら文句無しだな。
あー、ちなみに今の曲。
詳しくは知らないけど、イヤホンじゃなくスピーカーで流すのは禁止。
大変な事になっちまうから、絶対に駄目なんだとさ。
「それで───どうなのかね。
専門家の忌憚なき意見を、お聞かせ願いたい」
「・・・うーーん」
専門家っていう表現は、こそばゆいけども。
まあ、感じたままを素直に口に出そうか。
「俺としては、《風情がある民族音楽》かな。
曲としての出来の良し悪しは、ノーコメントだ。
出自の違う奴が、正しく判断できる事じゃあないし」
「ふうむ」
「だけどさ。
『あちらさん』が駄目だ、ってんなら駄目なんだろ」
「それは───」
納得がいかない顔の、偉いエルフ。
偉いってことは、年配者?
そんなに歳取ってるように見えないけどなぁ。
やっぱゲームでよくあるみたいに、老けない種族かー。
「最初の頃は、彼等も喜んでいたのに───どうしてこんな事に」
「最初って、いつさ?」
「5000年前だ」
うっはぁ。
即答するって事はアンタまさか、その当時から生きてんの??
「んじゃあ、喜ばなくなったのはいつ?」
「3000年ほど前あたりで、何となく。
そして1000年前くらいからはもう、唄ったら怒るようになったのだ」
「んんーー」
『最初は喜んでいた』。
つまり・・・飽きた?
いや、何か違う気がするな。
飽きただけでそんな怒るほど、エルフと精霊の仲が悪いわけはないだろうし。
だったら。
・・・あれ?・・・もしかすると・・・。
「なあ。エルフって寿命、どんくらいあんの?」
「我々に寿命は存在しないな。
命を途中で返上する、特殊な方法もあるが。
まあ基本的には、死ぬ要因が無ければ、ずっと生きているが?」
「精霊もそうなのか?」
「───精霊?」
きょとん、とした表情で、『長生きエルフ』が首を傾げた。
「いや、彼等は大体、400年ほどだ。
長くとも500年を超えることはない、と思うが」
「・・・原因、それだろ」
「え?」
「あっちはガンガン、世代交代してんじゃん。
最初は良くて次第に喜ばなくなったのは、そのせいだろ」
「ええっ??」
「《世代間の壁》、ジェネレーション・ギャップってヤツじゃね?
若い世代はそりゃ、全然違うぜ?
音楽とか食いモンとか、随分と好みが変わってきてんだろうよ。
あんたらの中にも、若いエルフはいるだろ?
例えばさ、そういう連中にとって、『この曲』はどうなの?」
「むむ───実際、どうなのだ?」
後ろを振り返ったエルフの問いにざわつく、その他大勢。
しばらく間を置き、やっと声が上がった。
「・・・まあ、その。古いっちゃ、古いですかね?」
「古いと、どういう問題があるのだ?」
「だから・・・ええと。
正直、ノれませんね・・・や、すみません、ホント!」
背の高い、耳にピアスをしたエルフが恐縮して、何度も頭を下げている。
真面目そうな感じではあるけど、履いてるのは有名ブランドのサンダルだ。
この中では精一杯、攻めてるほうなんだろうな。
「よし。
そんじゃまあ、作り直そうぜ。パパっと」
切り株に腰掛けたまま、ギターケースを引き寄せる。
「『作り直す』など、そんな無茶な!」
「だって俺、その為に呼ばれたんじゃねーの?」
「いやいや!簡単にはゆかぬぞ!?
《呪歌》とは、あらゆる法術を完全に無効化し!
その上で、我々の肉体能力を極限まで高めるという、超自然的な!」
「けど、それをやってくれてるのは、精霊だよな?」
「───!!」
「じゃあ、精霊さえ納得してくれるなら、『新曲』でもいいじゃん」
「──────」




