表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
481/742

479話 好機 03



「・・・それで、貴方はどうしてほしいのかしら」



会議場に満ちた沈黙。

その裏側のざわつきを無視して、ファリアが発言した。



「《承認》?それとも、《反対》?

ズィーエルハイトとしては、どちらでも構わないのだけれど」



相手の意図を理解した上での、素っ気無い口調。


うんうん。

君みたいな美形がそういう態度だと、雰囲気が氷点下まで下がるねー。

夏にはうってつけの冷房装置だよ。



「ふん。何を言い出すかと思えば、まったく。

我等はな、誰の承認も意見も求めておらんのだよ」


「それなら、この場に(つど)う意味も無いわね。

あとは御自分の領地へ戻って、庭の石像でも相手に演説なさったら?」


「こっ、この!!ふざけた事を───小家の分際で、よくもッ!」



あれま。

むしろあっちは、頭に血が(のぼ)っちゃったか?

顔真っ赤にしてさ。

やっすい役者だなぁ、ホント。



「ディハール殿。

ならば、何が目的の《特別会議》だ」


「時間の無駄に過ぎる。

言いたい事があるなら、はっきり言い給え」



ノルモンド家とマリス家が、相次いで発言。

『学芸会おじさん』の動揺を突き、少しでも情報を引き出す狙いか。



「いや、その───ただ一言、言う為だけだ!

他意は無い!

抜けるから、抜けると!そう言いに来ただけだ!」



うわ。

全然駄目じゃん、こいつ。


もっと気の利いた台詞(せりふ)を喋れよ。

台本に書いてなくても、咄嗟にアドリブをかませっての!

自分で考える頭が無い、バレバレの操り人形だ。

お前の底が知れただけじゃなく、《後ろの存在》の価値も大暴落だよ。

こんなのを主役に選ぶようじゃ、たかが知れてるってね。



「何か問題でもあるのか、ええッ!?」



パニクった哀れな道化の、やけっぱちな叫び。



「発案があるのだけれど、議長。

全員で承認の拍手をして、早く終わらせたらどうかしら」



火に油を注ぐような、ウチのお姫様の冷たい返し。


(あお)るねぇ、君。

ちなみに、当の本人に嫌味を言ってるつもりは全く無しだ。

多分、普通に突き放してるだけ。

それがジャストなタイミングすぎて、クリティカルヒットだよ。

やったね、ファリア!


それにしてもフェンビックの頭首って、マジで頭が悪いな。

お前の仰せつかった役目は、《扇動》だろ?

もう少しやんわり、のらりくらりと泳いでさ。

周囲の反応をしっかり見極めてから、一旦『お開き』にして帰りゃいいのに。



お陰様でもう、《ばっちりアウト》な流れだ。

すんごく《よろしくない》方向に、全速力で進んでるよね、これ。



「やかましいッ!!

だからそんなもの、求めておらんと言ってるだろうが!!

ええい、議長!!」


「何だね」


「《連合》の離脱に際して、各家の承認など必要だったか!?

投票を行うだの、そんな『約定(やくじょう)』はあったか!?」


「ふむ───そういうものは無かった、と思うが」


「そうだろう!そうだろうとも!

誰が何と言おうが、何を考えようが、結局何の意味も無いのだ!

それがこの、形だけの《連合》の正体よ!


もはや、こんなお遊びには付き合いきれん!!

だからこそ此処(ここ)で、フェンビックは宣言する!!


我等一族全員は!!

現刻をもって、《連合》から完全に離脱する!!」




”フェンビック”



ダグセランに向けて《心話》を送った瞬間。

テーブルの上に乗った『それ』が見えた。


隣で行儀良く座っていた筈の、お姫様。

その靴の───裏側の『残像』が。



こうなると思って、早目に指示(スタート)したのに!!


その予想よりもフライングすんなってのッ!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ