472話 異種間コミュニケーション 07
「それにしても、カールベンさん。
よくアスランザの名前が読めたわね?
首輪に彫った部分、もう殆ど見えなくなっちゃってるのに」
「ただのカールベンでいいさ。
それと・・・俺、首輪は見てないぜ?」
「え??」
「こいつが自己紹介してくれたんだよ。
『我の名はアスランザ、今後ともヨロシク』って」
「ええーー!?」
”『よろしく』とは、言ってないぞ!”
ビエラちゃんの足元に座ったボルゾイからの、ツッコミ。
やっぱり、デケぇな。
ベンチに腰掛けてる御主人様と、顔の高さが同じだよ。
「んんーー。
でも、この子はとても賢いから───本当に言うかも!」
”そうだ、言ったぞ!アスランザは賢いぞ!”
「はいはい!分かってるよー!」
ぽんぽん、と優しく頭を叩く手。
ブンブン振り回される、長い尻尾。
これは、いわゆる『ラブ』か?
俺は今、イチャイチャなラブシーンを見せつけられてんのかな?
「あ、そういえばビエラちゃん」
「何?」
「ビエラちゃんって、アスランザの言葉、分かんの?」
「ええと、何となくだけど、一応」
「凄いな。滅多にない才能だぞ、それ」
「そうかなー?
でも、よその家の子だと、あんまり分からないし。
私の才能じゃなくて、アスランザの才能じゃないかな?」
「それにしたって、みんながみんな出来る事じゃないぜ」
”驚いたろう、狼!御主人は凄いのだぞ!”
「今、こいつが何て言ったか分かるか?」
「んーー。
『私が褒められたから、得意になってる』、そういう感じ」
「やっぱ、ほぼ通じてるぜ、それ」
「カールベン、貴方もアスランザの言葉が分かるの??」
「まあな。
俺の場合は、才能とかじゃなくて、元から『そういうもん』だし」
なんかさあ、人間って、不思議なんだよな。
同じ人間同士でも、出身地が違うだけで言葉が理解出来ない事があるらしく。
他種族の言語だと、もう完全に駄目らしい。
それなのに、よくこれほど仲間の数を増やして繁栄したよなぁ。
生き残るのに大変だったろう。
熊や豹に出会っても、話し合いで解決出来ないとか困るじゃん?
一々争ってたら、キリが無いぞ?
何かが駄目な分、他の何かが優れるとか、そういう事なのかねぇ。
「あとさ、もう一つ。
これは、会った時からずっと気になってたんだけども」
「うん」
「ビエラちゃんは、凄く『いい脚』してるよな」
「ええっ!?」




