表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
467/742

465話 流出 03



「よし、決まった。買うのは、これと・・・これと・・・」



悩んだ末にようやく選んだ死体を、指差せば。

示したそれが、即座に目の前から消えてゆく。


毎回、一番外の出口付近までは向こうが運び出してくれる手筈だ。

それほど大したサービスじゃあないけどな。

こっちだって、相当なモノを払ってるんだし。



「あと、最後はこれだ。全部で5つあるよな?」


”ああ、間違いない───袋のほうは、どうする?”


「『袋』??」



死体にラッピングでもしてくれるって?


いや、違うか。

そういえば、何だかおかしな袋が置いてあったな。

見えてはいたんだけどさ、大して気にせず流してたよ。



”それの中身も一応、死体だぞ”


「へぇ。開けていいか?」


”勿論”



《保管庫》の隅、壁に立て掛けられた10近い麻袋。

歩み寄って、一番手前のやつの口紐を(ほど)く。



「・・・うッ!!」


”どうだ、凄かろう?”


「・・・・・・」



おい。

『凄い』とかの次元じゃないだろ。

騙し討ちか!?


袋の中で、赤茶けたドロドロの液体が沸騰している。

この低温下で凍り付きもせず。


湯気と共に猛烈な臭気が立ち昇り、覗き込んでいた顔を慌てて引き離した。



「ぐえぇっ・・・ひっどいな、こりゃ!

どういう死に方したら、こんな事になるんだよ・・・」


”さあなぁ───私にも分からぬ”



ああ??

分からない??

お前が殺したんじゃないのか?



「・・・もしかして、『こいつ』は最近のか?」


”そうとも。知り合いに持ち込まれてな。

どうしても引き取ってほしい、と”


「そりゃあ災難だ」


”しかし、こんな臭いビーフシチューを、どうしろというのか”


「やめろよ、食べ物に例えるな」


”───それで、『これら』は欲しいか?”


「要らない」


”いやはや、参った。こんな臭いトマト煮込みを、どうしろと”


「だから、やめろって言ってるだろ!」



鼻から息を吸わないよう、顔をそむけて口紐を縛り直し。



いや───待てよ。


慌ててまた(ほど)いて、今度は本気で中身を《視る》。



”何だ、やっぱり欲しくなったか?”


「・・・おい『墓守』。

これ、天使の死体じゃないだろ」


”そうか?”


「組成が違うぞ」


”しかし、『大体は天使』という事で良かろう?”


「『大体』で済ますには、違いが大きすぎるんだけどな」


”それでも、『これら』は自分が天使だと思って生きた。

周囲(まわり)もそう扱い、そうやって死んでいった”


「・・・・・・」


”つまりは、『天使』で間違いないのだ。

人間とお前よりは───いや、()しておこうか”


「・・・・・・」



明らかにケンカを吹っ掛けてきてるが、あえて無視だ。

今はちょっと、それどころじゃない。

他の麻袋も全て開いて、素早く確認する。


どれも同じだ。

煮え(たぎ)る液状で、吐き気を催す臓物臭。


僕の知っている『天使』とは、全組成の1/3くらいが異なり。

そして、一名分が一袋ではなく、ゴチャ混ぜにして流し込まれている。



”───どうする、欲しいか?”


「欲しいね」


”興味が無くば、無料(タダ)であったが。

欲しがるのなら、とても高いぞ”


「全部買う」


”ツケも分割も効かぬが?”


「『袋の分』は、これからすぐに届けさせる」


”はは、弟子使いが荒いのう!”


「・・・・・・」



馬鹿言うなよ。

ルーベルに”金目の物を持って来い”なんて、頼めるもんか。

これでも僕は、『先生』なんだからな。


こういうカッコ悪い事は、別のアテに頼る。



練習作(あいつ)』だ。

『あいつ』が支配下に置いた吸血鬼共から、貢がせりゃいいんだ。


金持ちのバケモノなんだろ、吸血鬼っていうやつは。


幾らでも持ってそうじゃないか。

ええ?


『墓守』が喜びそうな、ピカピカしたやつとかさぁ!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あの油絵臭い吸血鬼の紛い物、他の吸血鬼を支配下に置けるのか、、、戦争になりそうだなぁ、、、
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ