表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
463/742

461話 投げるべし 05



「《通り名》が、全てを物語っているねぇ。

《岩投げのウルダス》。

竜退治を成し遂げたなら、普通は《竜殺しのウルダス》だろう?


そうならなかったのは、それだけでは消せないほど悪名が広まっていたからさ」


「・・・仰るとおり、でしょうね・・・」


「《本物の騎士》と、《騎士道の騎士》。

まあ、君がどちらになるにしてもだ。

それを、自分の意思で選ぶなんてことは、出来ないね」


「え??どうして選べないんですか?」


「だって、そりゃそうだろう。

世間じゃ、”誰が何と言おうと、自らが信じていればいい”。

そんなのを得意そうに繰り返すけれどね。


《騎士》を決めるのは、他者だよ。

任命も生き様に対する評価も、君に決定権はありゃしない」


「・・・・・・」


「どちらかには、なるだろうさ。自動的にね。

それでも、納得がいかなくて。

叙勲されただけでは、自分が《騎士》なのか分からないならば」


「・・・ならば?」


「もう一杯、エールを頂けるかな?」


「あ、はい」



何杯目だっけ、これ。

サーバーからビールを()ぎながら、息をつく。


全然酔ってる感じじゃないな、この男。

やっぱり、『ならず者』は大酒飲みってか?



「───お代わりのついでに、質問があるのだがね」


「何です?」


「君は、憎んでいる人間がいるかね?」


「や・・・特には・・・」



仕上げに泡を、ジョッキのすれすれまで入れ。

テーブルに置いたそれは、すぐさま持ち手を掴まれ口元へ運ばれた。



「───んん〜〜!そんなこたぁ、ないだろぉ?

そこそこ生きていれば、そこそこ恨みは溜まる。

当然だよ、何も恥ずかしい事じゃあないさ」


「そう言われましても、ね・・・」



別に、そんな相手はいやしない。

思い浮かばない。

会社の同僚や上司だって、ごく普通だぞ?

トラブルが無かったわけじゃないが、憎いだとか、恨んでるとかまでは。


TVの司会者で、気に入らない奴はいるけどな。

それだって、単に好きじゃないってだけだろうし。



「本当に、一人もいないのかね?」


「いませんよ・・・・・・あ」


「おお?」


「いや・・・何というか、その。

ちょっと腹の立つ奴なら、まあ」


「それは、どんな?」


「・・・軍の、特殊部隊員ですかね。

あいつら、竜と戦う前、バカにしてやがったから。

オレが軟弱そうだから、とかじゃなくて。

《騎士》をバカにしてた。


あの時はオレ、一杯一杯だったんで流したけど。

後々思い出したら、腹が立つなぁ、って」


「ほほう!いいねぇ!!」



バン、と叩かれ、揺れるテーブル。

水滴溜まりの上を滑るジョッキ。



「何が、いいんですか」


「最高じゃないか!それでいこう!」


「は?」


「───よし!

ロバート君、『それ』を投げたまえ!」


「・・・はい??」


「これからも毎日、『岩を投げるべく』修業に励んでだね。

まあ、投げられやしないが、投げようと汗水垂らしてだ。

あと1年、いや、2年経ったら、さあ御前試合だ」


「『御前試合』??」


「そうさ。

王女様にでも頼んで、王室の方々を呼んでいただき。

彼等の目の前で。

その特殊部隊員とやらを全員、片っ端からぶん投げるのだよ」


「ちょっ、それは!!」


「その上で、訊ねてみればいいじゃないかね。

”こんな自分は、《騎士》に相応しいでしょうか?”、と。


君の騎士位が取り消されるか、そうでないか。

その結果で、全てがハッキリすることだろう」


「・・・取り消されたら、ええと、《騎士道の騎士》失格で・・・」


「されなければ君は、《ならず者》で《本物の騎士》というわけだな。

その場合は、『俸禄を増やすか封土を与えよ』と脅したまえよ」


「???」


「給料の増額、または領地をくれ、という事さ」


「それを王様に言うんですか!?」


「なんなら、『王女を寄越せ』でも」


「ひえぇっ!!」



どこの竜だよ、それ!!

今度はオレが誘拐するのかよ!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 完全に面白がってるなぁw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ