452話 一筋の糸を 05
「せっかくおとして、囲いこんだ悪魔達を。
カノントワルが、いつの間にか持っていく」
「いやいや。ないだろ、それは。
絶対にない」
「あるから、ゆってる。
毎月、わたしのふぁんくらぶから会員が抜けて、流れてる」
「えっ?カノンちゃんって、ファンクラブを持ってんのか??」
「ふぁんくらぶとは、違う。
彼女のは、《世界農業促進会》。
それの、パートナーシップ会員」
「───それは───あーー。
何というか、やりきれないな」
「ぜんぜん違うぎょうかいに、ファンをとられるのは頭にくる。
あくしゅ会の1つもしないくせして、何様のつもり?
どこのアイドル様?」
「お前は、『握手会』とやらをしてんのか?」
「とうぜん!
やることぜんぶやって、文句ゆってる。
うたうし、おどるし、ぎりぎりのところまでサービスもしてる。
ただ、人間あいてには、やりすぎるとサキュバス組合からクレームくるから。
そこだけは、気をつけてるけど」
こいつ、口を開けばいつも、”ロリコン、ロリコン”だが。
思っていた以上に、大々的に活動してるんだな。
悪魔としての《正業》、そっちのけで。
あ、まさか。
もしかして、それより稼ぎが良いって事なのか?
「会員には、物品のはんばいも、してる」
俺の心を読んだように、リーシェンが言った。
「へえ。何を売ってるんだ?」
「たとえば。
わたしが一度つかった、フォークとかスプーンとか。
ごくふつうの、そのへんで買えるやつ。
でも、売るときはドルでゆうと、フォークが100ドル。
スプーンなら、200ドル」
「そんなに取るのかよ!?
しかも、新品じゃないとか詐欺だろ!!
───ていうか、それ、何で値段が倍も違うんだ?」
「よし。せつめい、しよう。
フォークの場合は、さしたら痛い」
「───はあ??
当たり前だ、刺さなきゃいいだろ?」
「・・・・・・これいじょう教えるのは、料金がはっせいする」
「───よく分からんが、ここでやめておくぞ」
「こんなに頑張ってるのに『推し変』とか、かんべんしてほしい。
年間にスプーンを十本とか買ってる特別会員を、にがすとか。
ほんとう、たまったものじゃない」
「んーー、あーー。
でも、2位なんだろ?
ちょっとアレなジャンルだが、2位ってのは大したモンじゃねぇか。
どんな分野でだって、そこまでいくのは相当な事だよ」
「ゔぁれすと。ようやく、わたしの凄さに気付いた?」
「まだ気付いちゃいない。
ただ、一応は知識として蓄えておこう」
「・・・どらごんの収集へき、きもっ」
「やかましい!
そういう口のききかたをしてるから、ファンが流出するんじゃないのか?」
「いまのは、ゔぁれすと用。
対価をうけとったら、ファンにはサービスしてる。
わたしは、とてもおとなしくて、守りたくなるタイプ。
黒髪ろんぐの美少女は、正義」
「───なあ。
それ、カノンちゃんと被ってないか?」
「かぶってないっ!!」
「うおうっ!」
ライブ会場のスモークマシンみたいに煙を吐き、睨み付けてくる蜘蛛。
ああ、そうだな。
俺の勘違いだ。
全然、被ってなかったよ。
世にはびこる、ロリコン諸氏に告ぐ。
油断するなよ?
《ありのままの美少女》ってのは、かなり恐ろしいぞ!?




