445話 世界の真実Ⅱ
【世界の真実Ⅱ】
───XXィラーXXワルツは、笑っていた。
いや、何か嬉しい出来事があったわけではなく。
自分が悩めば、遠い遠い《地球》という惑星の気候がおかしくなり。
そこに住んでいる『友』から、やんわりと苦情が届いたせいである。
朝起きて、歯を磨き、顔を洗い。
数万年前に比べて些か増えた体重を減らす為、体を動かす。
具体的には、眷属達による楽団の演奏に合わせて『踊る』。
どうやら、それはそれで何処かの銀河系に迷惑を掛けているらしいのだが。
こればかりは許してほしいものだ、とXXィラーXXワルツは思う。
───思うだけだ。
───悩んではいない、悩まないぞ、決して。
ポジティブシンキングによる、ニューライフスタイル。
私は、『なりたい私』になろう。
分からぬ事に頭を悩ませるより、分かる事を素直に喜ぼう。
そして、もっと痩せよう。
そうだ。
《地球》の『友』に、文をしたためるのはどうか。
彼はずっと自室に籠りきりで、『XXX』と戦っているという。
その心を慰め、勇気付ける為。
私が知っている、とっておきの《雑学》を記そうではないか。
───ナイス・ポジティブ!
XXィラーXXワルツは石版の近くへにじり寄り、体の一部を細長く変形させた。
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基本的にイルカとクジラは同じであり、体長4メートル以上をクジラと呼ぶ。
《天昇魔》ザンガスの学生時代の成績は、上から1/3のギリギリ付近である。
リンゴや桃を包んでいるネットは捨てず、カレー鍋を洗う時に使うべし。
墓にトマトを供えておけば、絶対に《墓泥棒》は来ない。
宝くじに当たるより、落ちてきた隕石に当たる確立のほうが高い。
アルヴァレスト・ディル・ブランフォールは結局、貰った薬を使わない。
海水の塩分濃度は、たったの3.5%である。
天界には、”蜘蛛の悪魔とだけは仲良くしよう”と主張する派閥が存在する。
トーストを落とした場合、大体にしてバターを塗った面が床に着く。
仁生 薫を監視している死神は、脆弱性を突かれ改変された。
乾燥パスタ1本を手で折った場合、必ず3つ以上に割れる。
獣狼族のカールベンは、人間と結婚する。
布団を干した時の『いい匂い』は、ダニの死骸と糞の匂いである。
私は、甘口のカレーしか食べられない。
雪国の人々が冬道を歩いて転倒しないのは、そもそも滑る部分を踏まないから。
ヴァチカン法王庁にて、ネイテンスキィ・リッド・カーノンは上司を裏切る。
───よし。
───我ながら、達筆だ。
慎重に溶かしながら文字を刻んだ石版。
その出来栄えに、XXィラーXXワルツはとても満足し。
楽団もファンファーレを奏で、盛大に讃えた。
すぐに《地球》へ送ろう。
ああ、いや───少し乾かしてからが良いか。
逸る気持ちを抑え、ふーふー、と息を吹き掛ける。
きっと『友』は喜ぶだろう。
ただし。
石版のサイズは、ここにいるドラゴンとほぼ同じくらいだ。
彼の自室に、置けるといいのだが。
おっと、悩むのはいけない。
何とかなるはず。
───レッツ・ポジティブ!




