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431話 Nothing to say 08


聴こえてくるのは、もはや恥も外聞もない、子供のような嗚咽。



「───これが、《拳聖ベルカーヌ》の真実か───」


”・・・やめなよ。そんな称号、喜ばないってば・・・”



項垂れた魔王と猫王。

2名とも、ようやく出した言葉に力が無い。



「───天界に帰してやりたいが、向こうが拒否するだろうな」


”拒否しなかった時のほうが、恐ろしいね。

間違い無く、五体満足じゃいられないよ”


「ううむ───悩むところだ」


”地獄と天界の問題は、根が深いからなぁ”


「いや。それは違うぞ、キング。

少しも根深くなんかない」


”・・・・・・”


「あちらに理性的で公正な判断力があれば、話し合いだけで済んだ。

戦争など起こす必要も無かったんだ。


この星に人類が誕生して、どれだけ経つ?


『いい加減に《役割》を交代したい』というのは、そんなに無茶な主張か?

これから先もずっと、悪魔(われら)だけが悪者扱いか?」


”入れ替わった際に、色んな事がバレちゃうのが嫌なんだろうね。

天界の腐敗(くさり)っぷりは、こっちどころじゃないから”


「君が悪魔(こちら)側に付いてくれた事を、感謝しているよ、キング。


ベルカーヌは、ええと、情婦は無しにしても。

そうだな───ここの扉の《守護者》として任命するか。

それでどうだろう?」


”まあ、いいんじゃないの?

本音を聴いた感じ、別に悪い子ではなさそうだし”


「じゃあ、《拳聖ベルカーヌ》は私付きの直属配下、ということで」


”だから、その称号はよしなってば。

・・・あれ?・・・なんか、泣き声が止んでない?”


「む。本当だ───結局どうなったんだ、あっちは?」



宙に浮かぶ《鏡》に、魔王の指が触れて。

そこに映し出されたのは。



背を向け、ゆっくりと遠ざかってゆく堕天使の姿と。

抱き締められて肩越しに(のぞ)く《大佐》の顔。



───表情は、(ーwー)。



たしたし、と背を叩いているのは、子をあやす手付きか。

それとも、抱き締めが強い事へのやんわりとした抗議か。



「有難う《大佐》!!君の事は、決して忘れない!!」


”もう帰ってこないみたいに言うな!

彼女も開店時間までには、《大佐》を送り届けるでしょ。多分。”



思わず敬礼した悪魔と、一応突っ込む猫。



”・・・けどさぁ。《守護者》任命はともかく。

根本的な解決にはやっぱり、君が復帰するしかないよ?”


「───」


”もう十分過ぎるくらい休んだじゃん。いい加減、ここらが限界だってば”


「私が、遊んでいるように見えるか?」


”見えるね。

毎日毎日、寝てるか漫画読んでるだけだし”


「───52%だ」


”何?『扉』の耐久値?

半分も持っていかれちゃったかー”


「違う。

現在の《力》というか、私の《命》がだ」


”・・・はあ!?

だって君、体は治ったんじゃないの!?”


「いいや。今も尚、減り続けている」


”何でさッ!?”


「そして───相手は、44%だ」


”そ、それって、もしかして!?”



まん丸く目を見開き、飛び起きた猫に。

悪魔は右手の指を折り曲げて拳の形を作り、笑ってみせた。



「私は、最強の悪魔だぞ?


───《神》を、力尽くで黙らせてやる。

次の戦争で勝つのは、悪魔(われら)だ。


その上で。

いざ、メイエルが離婚した時には」


”・・・・・・”


「どうした、キング。

(えぐ)り込むようなカウンターパンチが、飛んでこないのだが」


”馬鹿魔王・・・これから出すんだよッ!!”


「いっ、痛いッ!!

しかも2発ッ!?」



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― 新着の感想 ―
[一言] さすが魔王さま!! ただ地獄の問題を放置してふて寝してるだけのぐうたらじゃあなかった!!
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