408話 禁断の箱 03
「お恥ずかしいところを見せてしまって。
本当に申し訳ありません」
「───ああ、いえ(ハイ)」
「これからもどうか、この子をお願いしますね。
存分に引っ叩いてやって、構いませんので」
「いやいや」
「それで、ですね」
「ん?」
「わたくしもヴァレストさんのお噂は、沢山聞き及んでおりまして。
拙作ではありますが、是非、これを」
ややオレンジがかった栗色の髪の、少女[母]が。
ハイブランド品を好む娘とは異なる、シックなハンドバッグを開ける。
そしてテーブルに置かれたのは、小さな水色の箱。
化粧品でも入っているような感じの。
「3本、入れております。
『悪魔用』『エルフ用』『人間用』と」
「え?」
「とても良く効きますよ」
「??何に??」
返答は、無し。
ただ、あどけない微笑みだけが返された。
「ええと───その」
「これまでに無かったくらいの体験を、お約束します」
「───は?」
だから、何の?
いや。
まさか───もしかして、これは。
待て待て待て、本気か!?
こんな場所で出すとか、いくら何でも!!
「今の数秒で、ヴァレストさんは色々とご想像なさったと思いますが」
「──────」
少女は、ゆっくりと二度、首を横に振り。
それから、慈愛に満ちた眼差しで俺を見つめて笑った。
「本当に、凄いですよ?」
「そ、それは、ええと」
「ただし、分かっていらっしゃると思いますが。
必ず、お相手の同意を得てから使ってくださいね?」
「──────ハイ」
これまでに数々の品を『贈り物』として渡してきた俺だ。
当然、贈られる事にも慣れているのだが。
『こんなの』は初めてだよ。
純粋に《価値があるか無いか》で言えば、ある。
《使い道があるか無いか》だけを問えば、ある。
だが、これはとりあえず『財宝部屋』にしまっておくべき物だ。
あーだこーだ、と考えるより、とにかくそうするべき。
俺は。
俺は、《紳士》なのだから。
たとえ、どんな噂に基いて『これ』が作られたにせよ。
出来の悪い娘様が、何か言いたげな目でこっちを見ていようと。
何でもないフリで流さねば、《紳士》の立場が危ういのである───




