386話 Good Job 03
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なんつーかさ。
今夜の俺ってば、強ぇのよ。
いいカンジにアルコールが回ってっからさ。
無駄な力が抜けて、突き抜けちゃってるワケよ。
この世で一番美味い酒ってのはな。
ウン十年物のブランデーとか、ソムリエお薦めの高いワインなんかじゃない。
『タダ酒』だよ。
何だかんだ言っても、金を払わずガブ飲み出来るやつがナンバーワンだよ。
俺の中にはすでに、5リッターの生ビールと、ウイスキー4本が入ってる。
即ち、このカールベン様の『価値』ってやつは。
普段がボールペンくらいなら、今は標準よりワンランク上の自転車くらいだ。
まあ、多少の水分は外に出しちまったけれども!
とにかく、タダ酒というものは。
ああ、いや。
───『ツケ』だったっけ?
───あれ?
まあ、いいや。
そんなこたぁ、気にしなくていい。
今夜の俺は、チョー強ぇ。
相手が吸血鬼の場合は、その。
どうやったって勝てないにしてもな!
わはははははッ!
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もう1台、サブのノートPCを開いて、スリープ解除。
映像を見て分かる範囲内、大雑把にだけど推測されるデータを入力してゆく。
カールベンが相手している奴は、けっして弱くはない。
手を抜いてる感じではあるものの、『手練』と呼んでもいいレベルだ。
あーあ。
羨ましいもんだねー。
『これクラス』を、ひょいと投げ込める他家はさ。
ウチはとにかく頭数が足りないから、こういうのがやれないんだよなー。
「──────」
左横から、めっちゃ視線を感じる。
頭首様が『そわそわ、ちらちら』と、こっちを見ていらっしゃる。
あのねぇ。
おやつが待てない子供か、っての。
《お遊戯》に集中してなさいよ。
さり気なくPCの角度を変え、ファリアから画面が見えにくいようにして。
・・・あ。
その時、つられる感じで僕のほうも、ふと向こうを見てしまった。
おい。
何やってんだよ、アル。
早速、『角』獲られてんじゃん!
しかも2箇所!
お前さぁ・・・馬鹿なの?
それ、《接待プレイ》してるわけじゃないよね?
「───そうだ、言い忘れてたが。
これは3回勝負───いや、『3回勝ったほうが勝ち』な?」
うわ。
かっこわる!
「ええ、分かったわ」
ファリア、君は君でさ。
アルの駒を『完全殲滅』する気、満々だよね?
そこに愛は無いのかい?
このままだと、惚れた男の魂が抜けちゃうんだけど?
もしかしてさ。
相手が動けなくなるまでブン殴ってからじゃないと、キス出来ないタイプ?
まったく。
少しは他家様の、《手加減が上手い吸血鬼》を見習ってほしいよ!




