表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
377/747

375話 Newbie(s) 03



管区大司教、ベリーリ・マルドロス。



彼は今、ようやくヴァチカンから戻ってきた《師》を前にして。

差し出された『評価書』と、付属する予期せぬ封書の内容に唖然としていた。




───2週間前、突然ヴァレストが連れてきた1名と1匹。


事情と要望は理解したが、教会内部に(かくま)うことは容易ではない。


メルセディアン師は、あまりに『人間を知らなすぎる』。


住み込みで勤めるにしてもだ。

同僚となった者や、礼拝に訪れる一般信徒と問題無くやれるとは思えない。

有り体に言えば、苦情が来る可能性が高い。


さりとて、自分にとっては(まご)うこと無き《師》だ。


死せる賢者(リッチ)』という種に生まれ変わった、その切っ掛けであり。

自分よりも長く信仰に身を置く《先達者》でもある。


管区大司教にまでなっておきながら、”何も出来ません”、では済まされぬ。

いや、マーカス坊やの嫌味を気にしているわけではないのだが。



───ならば、どうするか。



教会の関係者として、その身分を保証しつつも。

可能な限り、他者と関わらせない方法。



───丁度良く、《特務》に欠員がある。


───カトリックから抜け、その後に命を断ったブライトン・バルマー。


───その席が、補充の予定も無いままに空いている。



これぞ、僥倖。


特務に従事しながらでも、《師》が研究を続ける事は可能だ。

自分が頻繁に任務を回さねば良いだけの話だ。



しかし、『特務員』となるには絶対に、《教会籍》が必要となる。


(かくま)うだけなら、幾らでも誤魔化しも効くが。

『特務員』に関する任命権は自分ではなく、ヴァチカンにある。

その際の精査で当然、《教会籍》が確認される。


《教会籍》とは、信徒としての『正式な証明』だ。

どこの教会で、何歳の時に洗礼を受けたか。

その洗礼名は。

誰が『洗礼式』の責任者か。


そういった、信仰の始まりが刻まれたものなのだ。


勿論、そこに記されるべき両親の名前も必要となる。

両親の分の《教会籍》も問われる。

それだけでは足りない。

更に何代か(さかのぼ)って、偽造しなくてはならない。



───細心の注意と、緻密な計算が要求される。



自分が懇意にしている僻地の司教と共謀すれば、何とかなるか。

洗礼に関わった者はすでに他界している、という形にして。

両親は在命せず、他に家族は無し、で押し通して。


面倒この上無いのだが、これさえ整えば。

形式さえクリアすれば、ヴァチカンからの任命は取れる。


筆記試験や面接という名の『教義問答』も、《師》であるなら容易い。

その信仰は本物であり。

どれほど厳しい評価担当者に当たっても、怖れることは無い。




───万全の『身固め』で《師》を送り出し。


───そして、その結果が『これ』だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ