374話 Newbie(s) 02
「───しかし、未だにこんな連中が来ようとは。
やはり、《好意による不幸な事故》と言えど、同族殺しは許されぬか」
”私が生まれる前の話だな。
その《事故》とやらで亡くなった『死せる賢者』の数は?”
「はっきりとは憶えていないが、全部で20名ほどか」
”・・・恨まれるには十分だろう、それは”
顔を擦り、溜息をつく白ネズミ。
吹き上げる炎の中、更にもう一本の柱が燃え落ち。
ついに建物は倒壊。
がくり、と首を落として、男は項垂れた。
「───いくら研究記録が無事でも、礼拝堂が焼けたのは『痛い』」
”・・・信仰における『家』だからな。手造りではあれども”
「追っ手が及ばぬ場所。
北極か、南極か。
それとも───いっそ、人間達の中に混じるのも『あり』か」
”確かに、人間の街などで暮せば、手出しはされまい。
だが、正体を隠して目立たずやってゆく自信はあるのかね?”
「無い」
”・・・・・・”
「だが、逆にそれさえ何とかすれば、会心の一手とも言える」
”その『何とか』の詳細を聞かせてほしいのだが”
「───ここは、《同志》を頼るとしよう」
”《同志》?”
「そうとも。
種を同じくし、尊敬すべき信仰者でもある《同志》。
ベリーリ・マルドロスの力を借りようではないか」
”電話するのかね”
「ああ、するともさ」
”ご主人のスマホは、そこの『盛大な焚き火』の中だぞ。
私には大きすぎて、運び出せなかった”
「──────」
”それで、他の連絡手段は?”
「───まず、ヴァレストを呼ぶ」
”電話するのかね”
「──────」
”・・・・・・”
「召喚陣で」
”甚だ迷惑だと思うが”
「我等の信仰の為だ。致し方あるまい」
”その言い方は、『私も一緒に謝れ』という脅迫にとれる”
「それは考えすぎというものだよ、ラッチー。
勿論、君の優しさにはある程度、期待を寄せているが」
”・・・私も今後は、そういう口の上手さを学ぶべきなのだろうか・・・”
白ネズミは眉間に皺を寄せ、悔しげに顔を歪めた。
それから。
信仰と研究以外にはかなり間の抜けた『主』に一応、忠告しておく。
”耐火金庫も良いが、これからは非常用の食料と水も準備するべきだ。
そして、如何に深き信仰を持てど、スマホは普通に燃える。
次に買った際は、『耐炎魔法』を掛けておくことを薦めるぞ”
「うむ。憶えておこう。
念の為、君も憶えておいてくれたまえ。
ところで───召喚陣のここの部分───これで合っているかね?」
”・・・私も今後は、召喚や魔法まで学ぶべきなのか・・・”




