359話 Last Curse 03
「───しっかし、なあ。
俺もあのドラマは、リアルタイムでずっと観てきたが。
まさか、アニーの脚本とは思ってなかったぜ」
「頼まれて書いたんじゃないよ。
書きたいから書いて、持ってったらドラマ化されただけさ」
「まあ、そうだろうけどな。ドラマの出来については、どう思ってるんだ?」
「・・・悪くないね」
おっと。
これは予想外だな。
どんな罵詈雑言が飛び出すかと、身構えていたんだが。
「俳優の演技にも、文句は無いよ。
人間じゃないらしいアンタに、あの内容がどう思われてるかは知らないけどね」
「ううむ───内容、というか───展開は───」
どうにも、コメントし難い。
前Seasonまでの世間の反応は、『エグい』『怖い』『極悪』。
その殆どが、《悪魔レンダリア》に関するものだった。
───それが、完全に一変した。
『駄目だろ、これ』。
『もう殺してやってくれ』。
『レンダリア様、責任取って』。
今や視聴者の感想は全て、主人公であるグランツ・ハーマンに対してだ。
九死に一生を得たグランツは、悪い意味で『祓い屋』をやめた。
『人間性』さえも、捨ててしまった。
彼はただ、《天使》を殺し続けている。
これまで使ってきたクリスナイフの紋様を刻み直し。
『呪符』の効力も、反転させ。
ひたすら《天使》を殺す事だけに、情熱を注いでいる。
その為には、平然と人間も殺す。
《天使》をおびき寄せる手段として、教会も焼き払う。
───《悪魔》を倒す映画やゲームなら、ごまんとあるが。
───ここまで《天使》を『意味無く』殺戮する作品は、俺も初めてだ。
本物の天使は、キリスト教を含め、どんな宗教とも関係が無い。
信者がどれだけ祈ろうが、無慈悲に殺されようが、助けには来ない。
そうする義務を持たない。
だが。
人間達からすれば、《天使》は特別だ。
きっと自分達を見守ってくれている。
見えないけれど、居てくれる。
ある意味では、《神》よりも身近であると信じられている存在なのだ。
そして世界の中、キリスト教徒の数は決して少なくない。
信心深いか、そうでないかに関わらず。
国や地域によっては事実上の『国教』、『主流派宗教』とされる程だ。
───よって、超人気作がたちまち、『宗教倫理に反する問題作品』へ。
それが現在の、『The Pain of Dry Bones』を取り巻く状況である。
「俺の感想がどうこうと言うより。
普通に、主人公の行動がヤバいぞ。
最近はもう台詞も、”ジュリア、君が喜ぶと思って”、しか言ってないだろ」
「あんなのはまだ、序の口さね。
それに、主人公はグランツじゃないよ。
レンダリアさ」
「ええっ??そうなのか??」
「あたしにとっての主人公は、レンダリアだ。
グランツが主役だなんて思ったことはないし、言った憶えもないね」
いやいや。
ちょっと待ってくれよ。
それはあんまりだろ、あそこまで『人間』やめさせておいて。
『公式本』にも、主人公って書いてあるじゃないか。
俺、予約して買ったんだぞ??




