33話 無限の国 12
「・・・なあ、爺さん」
「何じゃい、小僧」
「爺さんは何故、絵を描くんだ?」
「描きたいから、に決まっとろう」
「『描くのが好きだから』、じゃなく?」
「・・・あん?」
「『描きたい絵』が、『目指してる絵がある』から、か?」
「・・・・・・」
すう、と。
老人の目が細くなる。
「急に絵の話をしおって。儂の御機嫌取りか?」
「いや。そういうつもりじゃないさ」
「とっとと帰ってくれんかの」
「師匠とか、いるのか?」
「もう死んだ。儂の『術式』は、完全にオリジナルよ。
先生の絵を調べても無駄じゃわい」
「ここには沢山の絵が飾ってあるが。自信作なのか?」
「・・・まあ・・・多少はな」
「一番大切な絵は、どれだ?」
「ここには置いとらんわい」
「その場所は?」
「秘密じゃ」
「『心の中のカンバスに』、か?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「臭っ!!クッサいのう!!
よくもまあ、真顔でそんな台詞が吐けるわ!!
いいからもう、帰れ!
あ〜〜〜〜臭っ!!」
「───そうかい。じゃあ、帰るぜ。
その前に、払うものを払ってもらうが」
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《オ前ノ 大切ナモノヲ 壊シテヤロウ》
《教典破壊》




