表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
347/744

345話 白昼怪奇 Extra 04



「彼等は、黒紋の修練鬼(グランヴォイド)の、それも上位種である『白銀鱗(シルバースキン)』。

引く手数多(あまた)の、エリートだ」



サイドテーブルに置いたコーヒーカップに口を付け、静かな声が続く。



「───それだけならば、配下にはしなかった。

特段の必要性も、興味も感じなかった。


しかし、だ。


彼等は先程言った『一般』の範疇を、大きく超えている。

持って生まれた才覚に甘んじることなく、その先に踏み出している。

交渉においても、戦闘においても。

新たな戦略を産み出し、挑戦し続けている。


───カオルは、悪魔の《位階》について知っているな?」


「はい、大体のところは」


「ブレイキンとエイグラムは、位階(すうじ)持ちではないが。

超短期戦ならば、相手が《位階》の上位陣であろうとも裏をかける。

目的を果たして生還出来るだけの実力を有している。


これは、位階(すうじ)では語れぬ、本当の『強さ』だ。


両名とも一見、脱力したお調子者だ。

しかし、その裏側では、他の悪魔が想像すら出来ない努力をしている。

肉体能力も、思考活動も。

向上の為の努力を惜しまず正しく行える、エリートを超えたエリートだ。


───もし彼等が他所(よそ)の一派に所属しており、それを目撃したなら。


私は歯軋りし、地団駄を踏んで悔しがるだろう。

”何故、もっと早くにこちらへ引き込めなかったのか”、と。

自らを激しく責め、その一派に嫉妬するだろう」




うわーー!!

すっごい、褒められてる!!


あたし達、『ちょっと歪んだ嗜好』の同志だけどさ。

やっぱりこう、しっかりと丁寧に褒められるのはイイよねーー!


きっと今のマギル講師って、《本音がダダ漏れ》な状態なんだろうなー。

普段だと絶対言わない、心の中に隠してる言葉が素直に出てくる感じ。


視界の隅でちら、とブレイク達を見れば。

顔を紅潮させ、泣いている。


ザ・漢泣き、ってやつ。


そりゃあね、こんなの最高だもん!

良かったね、『お兄ちゃん's』!




「───それ故、多少の盗撮には目を瞑っている」



「「「!?」」」



ああっ!!


途端、顔面が真っ青に!!

白目剥いちゃってるしっ!!


ええと・・・いや、待って!

ひょっとして、あたしが写真データを持ってる事もバレてるの!?



「カオルと最初に会った時は正直、”多少珍しい”という程度の印象だった」


「・・・ハ、ハイ!」


「だが、回を重ねる内、個別指導を行ってゆく内に。

少しずつ、単純な興味ではなく、面白さや充実感を覚えるようになった。


私がもし、人間だったら。

カオルとして生まれてきたならば、どうするか。


そう考えると。

まるで自分の事のように、応援したくなったのだ。

毎回の講義後の『手合わせ』や、今日のようなコードレビューが楽しみで。

成長してゆく様を見るのが、嬉しくて。


お前がもっと幼く、身寄りが無かったならば。

私の子として育てたかった、と思うくらいだ」



お・・・


お母さんッ!?


そんなプレイも、アリなんですか!?

あたし、覚醒(めざ)めますよ、マギル講師ッ!?

そういう方向だって全然、イケますよッ!?



「私の毎日は、充実している。

幸せな悪魔だな───私は───しあわ───せ、な」



あれ?

講師の『揺れ』が大きく・・・


うわっ!

ちょっと、ちょっと!!

こっちに倒れてッ!!


講師ッ!!



───時刻は、14:33。


───夕食が出来て呼ばれるまで、およそ4時間。


───本日の午後の予定は、取り敢えず『全キャンセル』だ。



気を効かせ、帰ってくれた『お兄ちゃん's』。


あたしは今。

自室で『人類を破滅させるクッション Extra Plus』に、深く沈み込んでいる。



マギル講師を、抱き抱えた姿勢で。



くうー、くうー、と深く甘やかな呼吸が、耳元を(くすぐ)り。

体は完全に、密着状態。

私が抱き締めているというより、抱き締められている感じ。


こんなの。

こんなのは、もうね。


『あたしのような健全な女子』には、極上の拷問(ごほうび)なんですよッ!!

少しでも気を抜いたら、絶頂モノなんですって!!



───けれど、ごく自然な生理反応に身を任せてはいけない。


快感を堪えることでしか得られぬ、別の快感も存在するのだから!



こういう時に役立つのは。

“1より大きい自然数のうち、1とその数でしか割り切れない数字”。


紀元前1600年頃には、存在が知られ。

(のち)にユークリッドによってその性質が証明された、”素数”。


これを数え続ける事こそ、我が『生命線』だ。



きっと、あたしの瞳孔は開きっ放し。

誰がどう見たって、『ガン決まり』状態だろう。




───マギル講師は、いつ起きるのか。


───そのあと、あたしはどうなってしまうのか。



恐ろしくて、気持ちイイ!!


これはもう、恐怖と快楽に挟まれた《耐久レース》だよねッ!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ