330話 ↓る者、↑る者 06
”ここから出じでえええぇ・・・”
「・・・なあ・・・『これ』、何か喋ってるんだけど・・・」
恐る恐る、ブレイクとエイクに訊ねてみる。
「ああ。そりゃあ、悪魔が入ってるからなぁ」
「そういう魔法道具だからなぁ」
「・・・いや・・・『これ』・・・要らない・・・」
「まあまあ!そう言うなよ、マーク!」
「おい、ダチ公が怖がってんじゃねーか。黙れよ、コラ」
エイクの太い指が、びし!、とロザリオを弾く。
”・・・・・・”
『おっさん声』が、ぴたりと止んだ。
「・・・何で、悪魔が入ってるんだよ・・・」
「何で、ってそりゃあ、アレだ」
「オメー、ギリアム様が人間の子供を育ててる、って聞いてるよな?」
「え・・・ああ、まあ・・・」
ヴァチカンでの召喚。
バルストがバックレやがった時のか。
『後頭部禿げ』とギリアム様の対話で、そういう話が出てきてたな。
「大方、子供達の誰かにチョッカイかけたんだろ」
「そりゃ当然、こうなるわな」
「・・・もしかして、《即死を防ぐ》のは、この悪魔がやるのか?」
「勿論だぜ、ブラザー!」
「そうしなきゃあ、永遠に出られねーからな、そいつ!」
「・・・・・・」
ああ。
なるほど、な。
《物理は防げるが、魔法は過信するな》。
それは、ロザリオの中の中年悪魔より格上の存在には、叶わないって事か。
そして。
何故ギリアム様がこんな『御褒美』をくださったかも、理解出来たよ。
僕が実技で悪魔達にした『嫌がらせ』に、『嫌がらせ』で返されたのだ。
間違い無く、それが理由だよ。
「まあ、とにかく貰っとけって!」
「あって困るモンでもねぇし!」
いや、困るよ!
ベソかいてる中年を首からぶら下げるとか、酷い拷問だろ!
タイミング良く車道にでも飛び出せば、役目を終えた悪魔は開放だろうけど。
そんな度胸、僕には無いぞ。
直後に後続車に轢かれたら、結局死ぬし。
どうすりゃいいんだ、こんなの!
「そういや、オレらも『御褒美』を貰ったんだぜ」
「オメーの筆記を合格させた功績を認められてな」
「・・・お前らも、『これ』を?」
「違う違う!オレらは滅多なコトじゃ、即死なんてしねーし」
「魔法も大体、効かねーな。抵抗力が高いからよ」
「じゃあ、何を貰ったんだ?」
「聞いて驚け!なななんと!どれだけひでェ失敗をやらかしても!」
「1回だけは完全に赦してくださる『約束券』を2枚!」
「あー、ブレイクとエイクで1枚ずつか。
もしもの時の保険として、そういうのがあると安心だよな」
「チッチッ!甘ぇな!
これは、使っちゃいけない『約束券』なんだよ」
「懐の中、大事に大事にしまっておいてな。
《切り札》ってのは、じっくり育てるモンなのさ」
「・・・育てる??」
「いいか、マーク?オレらはこれを使わずに、ひたすら頑張る訳だ」
「そして、いつかまた褒められて、御褒美を───となった時」
「ギリアム様にお願いして、この《切り札》の効果を、5%下げてもらう」
「つまり、『完全に赦す』から『95%赦す』にチェンジしていただく」
「時間は掛かるだろうが、これを繰り返してゆけば、アラ不思議!」
「どんなに失敗してもピッタリ7割成功した事になる、極上の『約束券』に!」
「何でそんな、変態的な遊びを思い付くんだ?
───ああ、すまん。
変態だったよな、お前ら」
「「HAHAHAHA!!」」
「ていうかさ。
その《切り札》、育てなくていいから僕のと交換してくれよ」
「だから、オレらは簡単に即死なんざ、しねーっての!」
「いいから、どんどん食えよ、マーク!無くなっちまうぞ!」
「・・・・・・」
目の前で、モリモリ減ってゆくヤキソバ達。
ああ。
食べなきゃもう、やってられないな!
僕も、輪ゴムで止められたペラペラの透明プラを開け、割り箸を突っ込む。
ソースさえブッかけてりゃいいんだろ!的な、安っぽい味。
まさに、ジャンク オブ ジャンク。
だが、悪くはない。
祭り囃子も花火も無い、ホテルの一室だけど。
こいつらと一緒に食べるのは、悪くない。
”・・・だずげでぇ・・・”
小さな声で、またロザリオが泣き出したが。
泣きたいのは、お前を押し付けられた僕のほうなんだよ。
おっさん。




