表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
327/743

325話 ↓る者、↑る者 01


【↓る者、↑る者】



───72点。



5割を超え、6割を突破し、7割さえ突き抜け。

しかし、特に優秀であるとも評価されない数字。

微妙と言えば微妙な、”へぇ、そう”、の一言で終わってしまう数字。



けれども。

決して無価値な点数ではない。

《72点》というのはこう見えて、大したヤツだ。

かなりの汎用性がある。



教育課程における点数なら、間違いなく合格だ。

それも、格好悪いギリギリのラインじゃなく、ちょっと余裕のある感じ。

周囲から”コイツ馬鹿だろ”、と思われない程度には。


資格試験でも、大概はイケるだろう。

倍率が10倍だとか、9割取れないと不合格とか決まってる、上級資格以外。

”ちゃんと勉強したんだな”、と納得してもらえるくらいには。



───72点。



実際、僕は《合格》したさ。


ギリアム様が出題された、『中間テスト』に。


あの分厚い召喚術の魔導書。

記述された言語からして普通ではなく、理解は困難を極めたが。

任務と任務のスキマ時間、睡眠を削ってまで頑張った甲斐はあった。


僕は決して、努力が不必要な『天才』じゃあない。

『人より努力出来る才能』がある訳でもない。


そこを何とかしてくれたのが、『7割レゲェメンズ』。

彼等によるサポートだ。

あいつら、『笑顔溢れる、鬼のような』指導だったよ。

足し算と引き算しか知らない子供に、微分積分を教えるようなもんだし。

そりゃあ、鬼にもなるってもんだよ。


だがまあ、何とか《合格》だ。


持つべきものは、友。

ピザとラムコークの代金を差し引いても、かなり世話になったな。

むしろ余計に取った2点分が、申し訳ないくらいだ。



───けれど、これで終わりじゃあない。


───『筆記』は合格したが、まだ『実技』が残っている。



しかもこれ、ただ召喚の技術を見ていただく、では済まない。


”召喚術の理論を応用した実践的手法を実演せよ”、だ。


この特に難しい言葉を含まない課題は、事前に出されていたんだが。

こっちのほうに取り組む時間は、殆ど無かった。


というか、ひどいだろ、これ。

どうとでも解釈出来るテーマだが、普通に挑んでも評価しないぞ、みたいな。

相当に革新的な事をやらないとバッサリ斬り捨てられる気配、プンプンだよ。


『実技』というより、ほぼ『研究発表』だよなぁ。

加えて、ギリアム様がお優しい御方でないのは、これまでの経験で確定だ。



───うぐぐ。


───胃がキリキリと痛む。


逃げてしまいたいが、それは物理的に不可能。

すでに僕は、地球上の何処でもないような《実技試験会場》に飛ばされている。

出口らしきドアとか、見当たらないし。

この土壇場で”ちょっとトイレ”、なんて口に出せる勇気も無く。



───もう、やるしかないのか。


ここ3日でなんとなく、頭の中だけでシミュレーションした、『アレ』を。


ぶっつけ本番で。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ